講演情報
[III-P02-5-06]胎児期より徐脈を認めた家族性洞不全症候群の女児例
○小島 有紗, 齋藤 和由, 浅井 ゆみこ, 内田 英利, 畑 忠善, 吉川 哲史 (藤田医科大学 医学部 小児科学)
キーワード:
洞機能不全症候群、多脾症候群、家族性徐脈
【背景】洞不全症候群は、洞結節自動能の低下や洞房間伝導障害が生じるために引き起こされる。ペースメーカーの治療適応を考えるうえで,徐脈に伴う症状の有無はきわめて重要である。原因としては特発性のものが多いが,二次性の場合があり、小児に生じる場合は先天性疾患、甲状腺機能低下、自己免疫疾患などに伴う場合が多く,稀に遺伝子異常に基づく家族性発症が知られている。【症例】胎児徐脈の指摘あり、在胎39週5日、経腟分娩で出生した。Apgar scoreは1分値9点、5分値10点で臍帯血pH7.199、BE-13だった。家族歴として父、父方叔母、父方叔父、父方祖父、父方祖母、父方曾祖父に徐脈があり、父方曽祖父は徐脈の診断はないが心不全のため40歳代で突然死している。本児も生下時より80回/分の安静時徐脈があり、経過観察していたが、浮腫、哺乳不良を認め、NT-proBNPが徐々に上昇したため、抗心不全治療を開始した。造影CTで多脾と下大静脈欠損奇静脈結合を認めた。抗心不全治療を漸減するとNT-proBNPが再上昇することを繰り返したため、シロスタゾールを導入した。以後、心拍数増加が得られ、抗心不全治療から離脱し、外来管理へ移行できた。【考察】洞不全症候群へのシロスタゾール投与により、PDE-IIIを阻害し、細胞内のサイクリック AMP(cAMP)を増加させることで、洞結節の脱分極を促し、陽性変時作用により心拍数が増加した。これにより徐脈に伴う心不全のコントロールができたと考える。濃厚な家族歴があり、多脾、下大静脈欠損奇静脈結合を合併していることから染色体検査、マイクロアレイを行ったが、既知の欠損は認めなかった。現在、遺伝子検索を継続中である。【結語】家族性洞不全症候群の1例を経験した。シロスタゾール導入により,抗心不全治療から離脱できた。突然死の家族歴があり、ハイリスク症例と考え遺伝学的検索を継続中である。