講演情報

[III-P02-5-07]HCN4遺伝子変異が同定された家族性徐脈症候群の乳児例

平海 良美, 青田 千恵, 岩田 あや, 久保 萌加, 川崎 悠, 内藤 昭嘉, 磯目 賢一, 堀 雅之, 山口 善道, 松原 康作 (神戸市立西神戸医療センター)
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キーワード:

HCN4遺伝子変異、胎児徐脈、心筋緻密化障害

【背景】洞不全徐脈症候群(Sick sinus syndrome;SSS)は一般的に加齢伴い発症するが、家族性に発症するSSSも報告されている。近年、家族性SSSの原因となる遺伝子変異の同定が進んでいる。【症例】1歳女児。【家族歴】父、父方祖父に徐脈。父方祖父の姉妹に詳細不明の心障害。【周産期歴】在胎32週、胎児スクリーニングエコーで大動脈弁逆流を指摘され胎児心エコー検査を施行された。心内奇形や弁逆流は認めなかったが、胎児心拍が111bpmと週数相当の3% tile以下であった。36週以降、胎児心拍は110bpm前後であったが胎児機能不全兆候はなく経過観察されていた。40週2日、胎児心拍低下のため緊急帝王切開が施行され、体重3760g、Apgar score 9点/5分で仮死なく出生した。【出生後経過】モニター上心拍が60-80bpmと徐脈が持続した。心電図では心拍87bpmでQTcFは436msecであった。心エコーでは左心室心尖部の肉柱形成が著明で心筋緻密化障害が疑われた。心拡大なく心収縮は良好であった。ホルター心電図検査では、総心拍数は157675拍、最低心拍数80/分、最高心拍数180/分、平均心拍数113/分で不整脈なくQT延長は認めなかった。その後の問診で父と父方祖父が徐脈を指摘されていることが判明し家族と相談のうえ、両親と児の遺伝子検査を行った。父と児にHCN4のmisceince varientが同定され、HCN4遺伝子変異による家族性徐脈症候群と診断した。現在、1歳であるが症状なく徐脈も認めていない。【考察】遺伝子検査の進歩により、徐脈症例における遺伝性疾患が診断されるようになった。HCN4遺伝子変異陽性家族性SSSは他の遺伝子変異を伴うSSSに比べると予後は良好とされているが、臨床像と遺伝的背景の関連性は明らかではない。変異によっては若年でPMIを施行される例もあり、診断後は長期にわたる経過観察が必要である。