講演情報

[III-P02-5-08]Mobitz2型房室ブロックとバセドウ病を合併した12歳女児

後藤 直人1, 渡辺 健2, 鶴見 文俊1 (1.公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 小児科, 2.たかばたけウィメンズクリニック)
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キーワード:

Mobitz2型房室ブロック、バセドウ病、甲状腺機能亢進症

【背景】甲状腺機能亢進症に伴う不整脈は頻脈性不整脈の頻度が高いが、房室ブロックの合併例も報告されている。【症例】12歳女児。心室中隔欠損(漏斗部欠損、左室容量負荷なし、肺高血圧なし)で当院を1年に1回の頻度で定期受診している。定期内服はなし。X-7月から起立時の眼前暗黒感があり、X-3月の定期受診時のホルター心電図では総心拍数131882拍/日であり、Mobitz2型房室ブロックがみられた。血液検査では、電解質異常やトロポニン上昇なく、遊離T4 1.01ng/dL、遊離T3 3.35 pg/mL、TSH 0.228μIU/mLと潜在的な甲状腺機能亢進が疑われた。追加検査で、抗TSH受容体抗体(TRAb)、甲状腺刺激抗体(TSAb)、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体が陽性であったが、バセドウ病の診断基準を満たさず経過観察としていた。X月の血液検査では、遊離T4 1.78ng/dL、遊離T3 6.14 pg/mL、TSH 0.009μIU/mL未満と甲状腺機能亢進の進行を認めた。眼球突出はなく、エコーでびまん性甲状腺腫大はみられなかったが、12誘導心電図で安静時心拍数116bpmの頻脈がみられ、確からしいバセドウ病としてチアマゾールで治療開始とした。【考察】バセドウ病を含む甲状腺機能亢進症のまれな合併症として房室ブロックが報告されているが、その中でも小児例の報告は限られている。成人例の既報では本症例と同様に、潜在性甲状腺機能亢進症の段階で房室ブロックを合併する報告も散見される。甲状腺機能亢進症の治療により房室ブロックの改善が得られた報告もあり、甲状腺ホルモンが刺激電動系に直接影響する可能性が言及されている。本症例は房室ブロックと同時に頻脈がみられており、機序を考えるうえで興味深い。【結語】甲状腺機能亢進症に稀に房室ブロックが合併することがある。β遮断薬投与前には心電図の確認が望ましい。