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[III-P02-5-09]成人先天性心疾患において心房粗動(AFL)が心機能に及ぼす影響

高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)
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キーワード:

心房粗動、心房心室連関、エスクロン

【背景】ACHDは構造異常が背景にあり、慢性的なAFLは心房リモデリングを促進し心不全リスクとなる。基礎疾患の種類や手術歴によりAFLの発生機序が異なり、心拍数コントロールとリズムコントロールのいずれを選択するかが課題となる。電気的心臓計測モニター(エスクロン)は非侵襲的に大動脈中の電気抵抗の変化率を測定し、一回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、収縮性係数(ICON)などを算出する。【目的】異なる経過の2例において、AFLが洞調律に復帰する前後の心機能をエスクロンで検討する。【症例1】34歳男性、TOFに対しVSD閉鎖術と右室流出路形成術後。肺動脈弁閉鎖不全による右心不全の進行により32歳時にAFL発症。β遮断薬で心拍数コントロールを行った。心不全が進行し、肺動脈弁置換術前にカテーテルアブレーションでAFLを治療した。治療前後でHR71→68(p=0.07)、SV46→43(p=0.002)、CO3.3→3.0(p=0.01)、ICON18→17(p=0.08)であり、SV、CO、ICONは低下したが数値的にはほとんど変化がない。洞調律に復帰後、呼吸が楽になったと自覚症状が改善した。【症例2】38歳男性、TGAに対してJatene手術後。肺動脈狭窄による右心不全の進行によりAFL発症。肺動脈形成術及び肺動脈弁置換術の方針となった。β遮断薬を開始したが、心拍数コントロールが不十分で動悸を繰り返すため、術前にカルディオバージョンを行った。DC前後でHR77→58(p<0.001)、SV41→51(p<0.001)、CO3.2→3.0(p=0.005)、ICON18→28(p<0.001)であり、SV、ICONが有意に上昇した。COはHRが低下した影響で若干低下した。【考察】症例1は慢性AFLで洞調律に回復後も心機能の改善は見られなかったが、自覚症状は改善した。症例2は計測上も心機能の改善を認めた。心房心室連関が心機能に重要であることが分かり、リズムコントロールは心機能を改善し長期的な予後の改善につながる。特にAFL発症から間もない症例では、積極的にリズムコントロールを目指すとよい。