講演情報

[III-P02-5-10]ベクトル心電図でみた完全型房室中隔欠損症の治療経過

  ○佐藤 啓1, 松尾 悠1, 工藤 諒1, 西村 和佳乃1, 高橋 卓也1, 齋藤 寛治1, 滝沢 友里恵1, 桑田 聖子1, 中野 智1, 小泉 淳一2, 齋木 宏文1 (1.岩手医科大学附属病院 小児科, 2.岩手医科大学附属病院 心臓血管外科)
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キーワード:

房室中隔欠損症、ベクトル心電図、肺動脈絞扼術

【背景】近年、標準12誘導心電図からベクトル心電図を算出する方法が報告され、脱分極ベクトルと再分極ベクトルの解離(空間QRS-T夾角の開大)は心筋障害との関連が明らかとなっている。完全型房室中隔欠損症では、肺動脈絞扼術や心内修復により心室容量負荷および圧負荷の状態が変動していることに着目し、治療経過における空間QRS-T夾角(spatial QRS-T angle:以下spQRS-T)について検証した。【対象と方法】2016年1月から2024年12月に心内修復術を施行した完全型房室中隔欠損症 10例(男:女=1:1)を対象として、肺動脈絞扼術前(pre PAB)、心内修復術前(pre ICR)、心内修復術後(post ICR)の標準12誘導心電図からspQRS-Tを算出し、経過について後方視的に比較検討を行った。post ICRは術後1年に最も近いデータを採用した(術後0.97±0.34年)。【結果と考察】PABおよびICR施行時の年齢中央値はそれぞれPAB 日齢32(8-85日)、ICR 1.03歳(0.64-3.74)であった。BNPはpre PAB 1011.7±1073.7 vs pre ICR 78.6±85.4 [p=0.0078]、pre ICR vs post ICR 49.1±44.3[p=0.0195]とPAB前後およびICR前後で低下した一方、spQRS-Tはpre PAB 115.6±30.1, pre ICR 131.7±28.0, post ICR 119.6±14.4であり、有意差はないがPAB後に増大しICR後に低下する傾向を認めた。またICR後に再手術を要した症例や心不全治療としてβ遮断薬の内服を継続している症例では、pre PABやpre ICRに比して、post ICRのspQRS-Tが有意に開大しており[p=0.0169,] post ICRのBNPも有意に高値であった[p=0.0480]。肺動脈絞扼術によって肺血管床保護および心室容量負荷軽減が得られる一方で、心室への圧負荷増大がspQRS-T開大に反映されている可能性がある。【結論】完全型房室中隔欠損症に対する治療経過において、容量負荷や圧負荷の状況によりベクトル心電図は変化しており、心内修復術後も含めて病態把握の一助になる可能性がある。