講演情報

[III-P03-1-02]大動脈基部拡張に対して7歳時に自己弁温存大動脈基部置換術を行ったLoeys-Dietz症候群の1例

東 健太1, 成宮 悠仁1, 森田 翔平1, 迫田 直也1, 井上 知也1, 田村 健太郎1, 立石 篤史1, 久持 邦和1, 柚木 継二2 (1.広島市立広島市民病院 心臓血管外科, 2.岡山大学学術研究院医歯薬学域 心臓血管外科)
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キーワード:

Loeys-Dietz症候群、大動脈弁輪拡張症、自己弁温存大動脈基部置換術

【背景】Loeys-Dietz症候群(LDS)は遺伝性の全身性結合組織異常疾患であり,類縁疾患であるMarfan症候群と比較して心血管系の症状はより重症であり,大動脈瘤はより若年・小径でも解離や破裂を来し得る.小児期に自己弁温存大動脈基部置換術を行った報告は稀である.
【症例】症例は7歳男児.出生時に他院で大動脈基部拡張,大動脈弓蛇行,口蓋裂,鼠径ヘルニア,脳室出血がみられLDSが疑われ,後に遺伝子検査で確定診断となった.日齢1で大動脈基部15.8mm,日齢13で17.9mmと拡張を認めロサルタンカリウムを内服開始し当院に紹介となった.CTで大動脈基部 19.3mm,心エコーで大動脈弁閉鎖不全症(AR)はみられず,その後は定期的な外来フォローを行った.経時的に大動脈基部は拡大し,月齢5よりカルベジロールの内服を追加したが拡大は進行,7歳時に大動脈基部 50mm,AR trivialとなり手術を施行した.術中所見より自己弁は温存可能と判断し,自己弁温存大動脈弁基部置換術(reimplantaion法)を行った.人工心肺離脱後の経食道心エコーではARはみられず.術後2日にロサルタンカリウムおよびカルベジロールを再開,術後4日目にアスピリン内服を開始した.術後7日目の心エコーではARはみられず冠動脈の血流は良好であることが確認され,術後9日目に退院となった.現在術後2か月,経過良好につき外来通院中である.
【考察】LDSによる大動脈基部拡張に対する手術戦略は一定の見解が得られていない.類縁疾患と比較しLDSでは若年・小径でも破裂や解離が起こり得るため比較的若年での手術介入を要する場合がある.術式に関しては長期間の抗凝固療法を避けることができるため自己弁温存が望ましいと考える.吻合部仮性瘤や他の部位の瘤化による再手術の報告もあり,術後の慎重なフォローアップが必要である.