講演情報
[III-P03-2-02]急性リンパ性白血病の小児における右心房血栓および三尖弁穿孔:症例報告
○山田 浩之, 吉田 真由子, 伊澤 美紀, 小山 裕太郎, 山口 修平, 妹尾 祥平, 永峯 宏樹, 大木 寛生, 前田 潤, 三浦 大, 山岸 敬幸 (東京都立小児総合医療センター 循環器科)
キーワード:
心房内血栓、三尖弁穿孔、急性リンパ性白血病
【背景】急性リンパ性白血病(ALL)は、小児において最も一般的な血液悪性腫瘍であり、化学療法が広く用いられている。しかし、治療中は血栓症リスクの増加を伴い、肺塞栓症など重篤な合併症につながる可能性がある。今回ALL治療中に発生した右房内血栓により三尖弁穿孔を認めた症例を経験したためその臨床経過を報告する。【症例】13歳の男性。ALLと診断され、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を左上腕から留置し、L-アスパラギナーゼを含むプロトコルによる化学療法を開始。10ヵ月後、退院前の心エコー検査で右心房内に血栓を発見された。化学療法前の心エコー検査は正常であった。化学療法中は、感染性心内膜炎を示唆する持続菌血症の既往もなく、心エコー検査は実施されていなかった。血栓は右房天井の上大静脈近傍に22mm×10mmのサイズで認め、PICC先端と近接していた。抗凝固療法は奏功せず、石灰化を伴った可動性血栓により、三尖弁前尖および中隔尖に穿孔、重度の三尖弁閉鎖不全を来たした。外科的血栓除去術と三尖弁形成術を施行し、術後経過は良好であった。病理検査で石灰化血栓を確認した。【考察】ALL治療における血栓症リスクは、L-アスパラギナーゼをはじめとする化学療法、長期の中心静脈カテーテル留置、炎症など多因子が関与する。石灰化した血栓による慢性的な機械的刺激が原因で三尖弁穿孔を来した症例は、非常にまれである。定期的な画像検査による早期発見と、リスク因子の適切な管理、必要に応じた迅速な治療介入が、ALL治療における血栓症合併症の予後改善に不可欠である。