講演情報

[III-P03-2-04]完全型房室中隔欠損症術後の長期中心静脈栄養管理中にショックに至った1例

下山 伸哉, 新井 修平, 佐々木 祐登, 稲田 雅弘, 浅見 雄司, 中島 公子, 池田 健太郎 (群馬県立小児医療センター 循環器科)
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キーワード:

中心静脈カテーテル、胸腔内漏出、ショック

【背景】CVC(中心静脈カテーテル)による高カロリー輸液は、経腸栄養の確立が困難な重症病態や術後遺残病変等を有し水分制限が必要なケースに必須な栄養療法である。長期留置型のCVCは素材が柔らかくまた感染面にも考慮されている構造であるが、経過中に急激な症状を呈する合併症を経験した。【臨床経過】6歳5ヶ月の男児。完全型房室中隔欠損症修復術後、21トリソミー、重度脳室周囲白質軟化症。在胎31週4日、出生体重1646gで出生。1ケ月時に主肺動脈絞扼術、動脈管クリッピング術を施行した。1歳11ヶ月時に心内修復術を施行したが、術後僧帽弁狭窄が徐々に進行し、水分制限・利尿剤等の心不全治療を行っていた。また、経過中、重症胃食道逆流症のため嘔吐を認め頻回に入院、最終的に十二指腸チューブによる注入管理から5歳9ヶ月時に空腸瘻増設し、空腸瘻からの注入を開始した。しかし、原因不明の頻回の嘔吐のため注入が再開できず、6歳1ヶ月時に右内頸静脈から4.2Frのシングルルーメンブロビアックカテーテルを挿入し、高カロリー輸液を開始した。約4ヶ月後、多呼吸、血圧低下を認め、胸部レントゲンで右肺に多量の胸水貯留を認めた。胸水を穿刺し循環は安定傾向となったが、穿刺胸水の糖濃度が上昇しており、輸液の胸腔内への漏出による胸水貯留のためのショックと判断した。その数時間後に左肺にも胸水貯留を認め穿刺を要し、カテコラミン投与、人工呼吸管理などの集中治療を施行した。2日程度で尿量が確保され、その後凝固障害も改善傾向となり、約1ヶ月後に一般病床に転出した。【結論】長期留置型の軟材質のCVCにおいても、特に高濃度輸液使用の際は呼吸循環に影響を与えうる合併症の発生に留意が必要と考えた。また、その際は対側肺にも短時間に影響を与える可能性を考慮し管理することが必要と考えた。