講演情報

[III-P03-2-08]Middle aortic syndromeに対して左開胸アプローチで縮窄部の切除および直接吻合を行った6歳男児の1例

東 健太1, 成宮 悠仁1, 森田 翔平1, 迫田 直也1, 井上 知也1, 田村 健太郎1, 立石 篤史1, 久持 邦和1, 柚木 継二2 (1.広島市立広島市民病院 心臓血管外科, 2.岡山大学学術研究院医歯薬学域 心臓血管外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

Mid aortic syndrome、異型大動脈縮窄症、左開胸

【背景】Middle aortic syndromeは下行大動脈から腹部大動脈のいずれかの領域に起きる異型大動脈縮窄症であり,高安動脈炎,遺伝子疾患,特発性など様々な原因が存在する.高血圧の原因となるため降圧薬が必要となることが多い.根治治療としては血管内治療や手術を行い,手術は人工血管を用いたバイパス,パッチ形成,人工血管置換などが選択されることが多い.
【症例】症例は7歳男児.日齢3で心雑音を指摘され,心エコーで大動脈縮窄症(CoA)および心室中隔欠損症(VSD)の診断となった.日齢9にCoAが進行しLipoPGE1を開始し当院へ搬送となり,VSDは小さくCoAに対する介入のみを行う方針となった.バルーン拡張を行いCoAによる圧格差は改善,PDA閉鎖後も循環は保たれていた.その後,再狭窄を繰り返し,その都度バルーン拡張を行い,6歳時に手術目的に当科紹介となった.下行大動脈は左気管支を横切るように右側に屈曲し,同部位が最狭部であった.解剖学的に正中切開でのアプローチは困難であるためVSDへの介入は行わず,左開胸アプローチで手術を行った.下行大動脈を授動し,30分間の単純遮断で縮窄部の切除と直接吻合を行った.術後心エコーでの評価で流速 3.6m/s 圧格差 53(18)mmHgから流速 2.2m/s 圧格差 19(10)mmHgに改善を認めた.術後経過は良好で術後6日目に自宅退院となった.現在術後8か月,外来通院中である.
【考察】Middle aortic syndromeに対する手術は人工血管を用いたバイパス,パッチ形成,人工血管置換などが選択されることが多い.しかしながら小児期に人工血管を用いた場合は成長に伴い再手術が必要となる可能性を考慮する必要がある.本症例では大動脈が右側に屈曲していたが最小限の肋間動脈の処理で授動を行い単純遮断での直接吻合が可能であり,対麻痺などの脊髄虚血の合併症はなく術後経過は良好である.