講演情報
[III-P03-3-01]労作時呼吸困難を主訴に部分肺静脈還流異常症,静脈洞型心房中隔欠損症と診断し,修復術で症状改善が得られた61歳男性
○笹尾 拓生1, 中村 蓉子3, 大鹿 美咲3,高井 詩織3,渡邉 友博3, 渡部 誠一3, 木下 亮二4, 川畑 拓也2 (1.総合病院 土浦協同病院 研修医, 2.東京科学大学 心臓血管外科, 3.総合病院 土浦協同病院 小児科, 4.総合病院 土浦協同病院 心臓血管外科)
キーワード:
部分肺静脈還流異常症、心房中隔欠損症、外科的治療
【背景】部分肺静脈還流異常症(以下PAPVR),心房中隔欠損症(以下ASD)は無症状のまま経過する場合もあるが,加齢とともに右心不全症状をきたす場合がある.今回我々は,短絡量は多くはないが,修復術により症状改善を得られた成人症例を経験したので報告する.【症例】61歳男性【主訴】労作時呼吸困難【現病歴】中学生時にASDの疑いを指摘されていたが精査は行われず,定期的医療機関の受診はなかった.受診4か月前より労作時呼吸困難を自覚し,健康診断で心房細動(以下Af)を指摘され近医受診した.Afに対してジゴキシン,カルベジロールを投与されたが症状改善に乏しく精査加療目的に当院紹介となった.精査にて心臓超音波検査で静脈洞型ASD,重症三尖弁閉鎖不全症(以下TR),右心系拡大所見を認め,CTで右上肺静脈が上大静脈へ還流する所見を認めた.心臓カテーテル検査では肺体血流比1.37の結果を得た.肺高血圧の所見は認めなかった.右心系拡大と重症TRが症状に寄与していると考え,心房中隔欠損閉鎖術,部分肺静脈還流異常修復術,三尖弁輪縫縮術,maze手術を施行した.術後のCTで上大静脈および右上肺静脈の隔絶を確認し,術後13日で独歩退院となった.退院後労作時呼吸困難の症状なく推移している.【考察】本症例はASDにPAPVRを合併していたことから右心不全症状をきたし,Afや労作時呼吸困難を呈したと考えられる.肺体血流比は絶対的な手術適応ではなかったが,外科的介入により症状の改善をえられており,成人期に発見されたPAPVRに対する外科的介入の意義を示唆する.今回の外科的介入が本症例の今後の不整脈制御や心機能維持へどれだけ寄与するか長期予後の検討が必要である.【結語】成人期に労作時呼吸困難を契機として診断し,積極的な外科的治療介入で症状の改善を得られたPAPVR,ASDの一例を経験した.