講演情報

[III-P03-3-05]Fontan循環成人患者における頭痛の検討

仲本 雄一, 佐々木 美穂, 豊野 学朋 (秋田大学 医学部 小児科)
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キーワード:

Fontan、頭痛、成人先天性心疾患

【目的】Fontan循環の患者は長期的にさまざまな合併症を抱えるが, 頭痛に関する知見は限られている. 本研究では, Fontan循環成人患者における頭痛の実態とその関連因子を明らかにすることを目的とした.
【方法】本学附属病院小児科および診療連携施設において, 2023年10月から2024年9月までの期間に後方視的観察研究を実施した. 対象は18歳以上のFontan循環患者とし, 同意は公開文書によるオプトアウト方式とした. 診療機会の全てで頭痛を訴えた症例を「頭痛あり」と定義し, 頭痛の有無に応じて各臨床情報や生活状況を比較した. 統計解析はノンパラメトリックデータを用い, Mann-WhitneyのU検定を適用した.
【成績】対象者は13名 (女性: 69%, 年齢中央値: 26.9歳) で, 頭痛の有病率は54%であった. 頭痛の頻度は女性で有意に高く (p=0.04), また中心静脈圧の上昇との関連が示唆された (p=0.07). 一方で, 生理学的関連因子を欠く頭痛例も存在し, 頭痛の発症メカニズムは多因子的である可能性が示された.
【考察】Fontan循環成人患者において, 慢性頭痛の有病率は54%に達し, 特に女性で高い傾向がみられた. 中心静脈圧の上昇が頭痛と関連する可能性が示唆されるが, 一部の症例では循環因子との関連が見られず, より詳細なメカニズムの解明と治療法の検討が必要である.
【結論】Fontan術後患者における頭痛は多因子的要素を有し, 循環管理の影響を受ける可能性がある. 今後, さらなる研究を通じて, その発症機序の解明および治療戦略の確立を目指す.