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[III-P03-3-10]ファロー四徴症術後の肺動脈弁閉鎖不全と左室心筋重量の関係

高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)
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キーワード:

ファロー四徴症術後、心筋重量測定、MRI

【背景】MRIによる心筋重量測定で、左室心筋全体に対する肉柱部(Trabeculated mass)の割合(T% of LV)が20%以上の場合に左室心筋緻密化障害が疑われるが、それ以外にも心筋リモデリングの指標として意義を持つ。【目的】TOF術後PRによる長期の右室負荷が、心室連関により左室心筋にも影響を及ぼすことをT% of LVから検討する。【対象】PVRを検討したTOF術後患者7名。34~44歳。ARは軽度以下。【方法】MRIでスライス毎に心筋の輪郭を左室心筋全体と肉柱に分けて手動で描き、基部から心尖部まで積算してT% of LVを測定した。この測定値とLVEF(心エコー)、PR逆流率(PRRF)、RVEDVI、RVESVI、RVEF(MRI)、LVEDP(心カテ、3名のみ)との関係を検討した。【結果】全員、PRRF>25%(39~69)かつ有意なMRI所見1つ以上満たしPVRの適応を満たした。LVEF 38~73、RVEDVI 109~234、RVESVI 62~184、RVEF 22~43 、LVEDP 4~10だった。T% of LVは20.2~41.2%で全員20%以上の高値を示し、LVEF、RVEDVIと正の相関を認めた(r=0.58、0.46)。【考察】PRによる長期の右室負荷が大きい程、左室負荷も大きく肉柱部が肥大する。LVEFが低下する程、肉柱部の肥大も大きいと予想したが逆であった。これは、多くの例でまだ代償的にLVEFが保たれている状態と考える。最重症のEF38%の症例はPRRF 69%、RVEDVI 195と高値だが、EDPは4でT% of LVは20.2%で最も低かった。本人の事情でβブロッカーとARBで数年経過を見た後にPVRを行った。このように慢性的な内服治療ではLVEDPが上がらずT% of LVも上昇しない症例がいることに注意が必要である。そこで、PRRF×LVEFや RVEDVI×LVEFを新たな指標としたところ、T% of LVと強い相関を示した(r=0. 76、r=0.71)。【まとめ】右室拡大が強いがLVEFが保たれている症例では心室連関により左室肉柱部が肥大する。LVEFが低下した症例では、慢性的なβブロッカーやARBの影響で肥大が目立たないことがある。