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[III-P03-4-01]起立性調節障害例に対する塩化ナトリウム経口投与の効果

堀口 泰典 (国際医療福祉大学熱海病院小児科)
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キーワード:

起立性調節障害、塩化ナトリウム経口投与、前負荷

【目的】起立性調節障害(OD)患児では座位でも心拍出量が減少し、その原因が前負荷の著しい減少によることをすでに昨年の本学会で報告した。その前負荷減少を改善する目的で塩化ナトリウム経口投与を実施したのでその効果を報告する。【方法】OD38例(10歳10ヶ月~23歳9ヶ月、平均14.7歳±2.8歳、中央値14.3歳、男児13例女児25例)を対象とした。全例、診断基準を満たしシェロング試験も陽性であった。全例、インフォームドコンセントを得た上で、日本薬局方塩化ナトリウム3g/day 分3を経口投与した。効果は外来での面談、診察、シェロングテスト等により評価した。なお評価に際してカルテ記載不明瞭・不記載例、もともと症状の無かった例は除外した。【成績】(改善例数/対照全例数と表記、()内は改善率)立ち眩み:29/32(90.6%)。起立継続時のめまい:26/26(100%)。入浴時のふらつき眩暈:19/20(95%)。起床不良:14/18例(77.8%)。顔色不良:10/10(100%)。食欲不振:11/11例(100%)。腹痛:6/9(66.7%)。易疲労性:20/23(87.0%)。頭痛:20/21例改善(95.2%)。胸痛:5/6(83.3%)。乗り物酔い:10/15例改善(66.7%)。シェロング試験:脈圧狭小化改善13/28(46.4%)、収縮期圧低下17/27例(63.0%)、心拍数増加19/30例改善(63.3%)、起立継続不能12/12例改善(100%)。不登校:18/19例登校可能になった(94.7%)【考案】OD例では座位ですら心拍出量低下が高度で症状はそのため生じると考えられる。今回、前負荷を増多する目的で塩化ナトリウムを経口投与したところ、高率に症状改善が認められた。これは、心拍出量低下を塩化ナトリウム経口投与が軽減し、その結果心拍出量低下も軽減したためと思われる。【結論】1)ODでは前負荷を増加させる塩化ナトリウム経口投与が有効である。2)前負荷増加による座位・起立時の心拍出量低下が軽減するためこのような効果が現れるものと 思われる。