講演情報
[III-P03-4-02]甲状腺ホルモン製剤により動脈管狭小化が得られ新生児期の手術が回避できた一例
○永尾 宏之, 五東 春花, 起塚 庸 (高槻病院)
キーワード:
甲状腺、動脈管、新生児
【背景】正期産児における症候性動脈管開存症(PDA)は薬物療法よりも外科的介入が優先される。本症例は、症候性PDAに甲状腺機能低下症を伴っており、甲状腺ホルモン製剤の投与で動脈管の狭小化が得られ、新生児期の外科的手術を回避することができた。甲状腺ホルモン製剤によって、症候性PDAが改善する症例は極めて稀であり報告する。【症例】在胎40週0日に緊急帝王切開で出生。出生体重は2966 g、Apgar Score 9/10で、哺乳不良と心雑音を認め日齢7で当院搬送。血液検査でTSH 1207.96/μIU/ml、F-T4 0.25ng/dl、NT Pro BNP 24595 pg/mlと甲状腺機能低下症を認めた。頸部エコーでは甲状腺は同定できなかった。心エコーで動脈管3mm大の開存と僧帽弁逆流症も認めた。症候性PDAと先天性甲状腺機能低下と診断し、LT4 10μg/kgで開始した。日齢11より多呼吸が出現し利尿薬を開始した。日齢13に心不全増悪と判断し、高流量鼻カニュラ酸素療法と利尿薬を増量したが、心不全は増悪傾向で外科的介入を考慮した。全身状態改善のため甲状腺機能改善を先行させる方針となり、内科的治療を強化したところ、甲状腺機能改善に伴い心不全症状も改善した。動脈管は1.3mmに縮小し新生児期の手術は不要と判断した。日齢20に甲状腺機能が改善し、日齢59で退院となった。以降外来で経過観察しているが、動脈管は残存するものの症候化することなく推移している。【考察】甲状腺ホルモン製剤より動脈管狭小化が得られた一例を経験した。この症例での甲状腺ホルモンに治療に対する動脈管の反応は、甲状腺機能と動脈管閉鎖の調節機構との間に潜在的な相互作用が存在することを示唆している。正期産児の症候性PDAの症例でも甲状腺機能に注意することで、手術を回避できる可能性がある。