講演情報
[III-P03-4-03]心エコー検査における左室駆出率低下を契機に診断された先天性甲状腺機能低下症(CH)の1例
○古川 智偉1, 鶴見 文俊1, 渡辺 健2 (1.医学研究所北野病院 小児科, 2.たかばたけウィメンズクリニック)
キーワード:
先天性甲状腺機能低下症、クレチン症、新生児
【背景】先天性甲状腺機能低下症(CH)は、新生児マススクリーニング(NBS)にて約1400人に1人の割合で発見される疾患である。甲状腺ホルモンは母体から経胎盤的に移行することから、NBSの結果が出る前に症状を認めるCHは少ない。心臓超音波検査にて左室駆出率(LVEF)低下を契機に診断されたCHの1例を経験した。【症例】二絨毛膜二羊膜性双胎第1子として、在胎37週1日で予定帝王切開にて出生。Apgar score1分値8点、5分値8点。出生体重2662g、身長45.8cm、Appropriate for Gestational Age。出生後、呼吸循環ともに安定しており、身体所見でも明らかな異常を認めず。出生日の心エコーでは、LVDd 16.8mm(99%)、LVEF 0.61であり、動脈管開存は認めたものの、心嚢液貯留、心臓構造異常などは認めなかった。その後哺乳不良などは認めなかったものの、動脈管開存のフォローのために施行した日齢5の心エコーにてLVEF 0.50と心収縮の低下を認めた。スクリーニングとして血液検査を提出したところ、TSH=537.103μIU/mL、FT4=0.47ng/dLであり、CHと診断した。活気不良の疑いもあったため、同日からレボチロキシンナトリウム(LT4)15μg/kg/dayの内服を開始し、徐々にTSH低下傾向となった。日齢21頃からLVEF 0.60以上で安定し、TSHは日齢27で72.079μIU/mL(FT4=1.26ng/dL)にまで改善した。しかし、日齢26から心嚢液貯留傾向を認め、日齢34にTSH=72.059μIU/mL (FT4=0.86ng/dL)まで再上昇を認めたため、同日からLT4を15μg/kg/day から16μg/kg/dayに増量した。日齢41にTSH=26.533μIU/mL 、FT4=1.49ng/dL、日齢42に心嚢液も改善したため、日齢45で退院となった。【考察】甲状腺ホルモンの異常は心筋の収縮能に影響することが知られている。本症例は出生時のLVEFは正常範囲内であったが、約1週間後からLVEFの低下を認めた。新生児期にLVEFの低下を認めた場合は、CHも鑑別にあげ精査を進めることが必要である。