講演情報

[III-P03-4-05]赤血球凝集と好中球凝集を認めたマイコプラズマ肺炎合併の川崎病例

阿久津 萌1,2, 松原 大輔1,2, 郡司 勇治2, 高橋 和郎3 (1.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科, 2.国際医療福祉大学病院 小児科, 3.国際医療福祉大学病院 感染症科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

川崎病、マイコプラズマ感染症、寒冷凝集反応

【背景】川崎病は原因不明の血管炎であるが、10-22%の症例にマイコプラズマ感染症が合併すると報告されている。 寒冷凝集反応はマイコプラズマ感染の診断の契機となりうる。【症例】特記すべき基礎疾患のない6歳男児。第7病日に発熱、眼球結膜充血、口唇発赤、イチゴ舌、両側頸部リンパ節腫脹、両手の硬性浮腫があり、川崎病主要症状を5/6認め、川崎病の診断で精査加療目的に入院した。血液検査ではWBC 5900(好中球65%), CRP 2.95と炎症反応の上昇は軽微であり、心臓超音波検査では冠動脈拡張所見はなかった。同時に咳嗽、鼻汁症状が目立ち、入院前に他院のCT検査で副鼻腔の粘膜肥厚所見があったため、急性副鼻腔炎に対してABPC/SBTでの抗菌薬治療、川崎病に対してASA内服を開始し治療反応を観察した。第9病日の血液検査では、新たに血算検体の赤血球凝集、好中球凝集の所見を認め(37℃の加温で凝集は消失)、マイコプラズマ感染症を鑑別にあげた。熱型、炎症反応は改善傾向みられたが、発熱以外の川崎病主要症状は改善なかったため、同日より大量免疫グロブリン静注療法 (2g/kg)を開始した。川崎病主要症状は経時的に改善し、冠動脈病変の合併なく経過した。後日、免疫グロブリン投与前のマイコプラズマ抗体価(PA法)は40960倍(IgM 20480倍)、寒冷凝集反応は8192倍といずれも高値であり、 マイコプラズマ感染症と診断した。マイコプラズマ抗体価の低下とともに好中球凝集は1週間で、赤血球凝集は4週間で消失した。【考察】マイコプラズマ感染合併川崎病では、マイコプラズマによる特異的免疫反応から早期治療が重要とされている。本症例では、赤血球・好中球凝集など、川崎病では通常見られない所見から、マイコプラズマ感染症診断に繋がった。感染症合併の川崎病では、免疫グロブリン療法に加え感染症治療が必要になる場合があり、その精査は重要である。