講演情報
[III-P03-4-06]生後7日に大腸菌敗血症で死亡した静脈管開存による門脈体循環シャントの一例
○奥本 航平1,2, 辻井 信之1,3, 梶本 昂宏1,3, 辻本 虹歩1,2, 野上 恵嗣1 (1.奈良県立医科大学附属病院 小児科, 2.奈良県立医科大学附属病院 周産期医療センター, 3.奈良県立医科大学附属病院 先天性心疾患センター)
キーワード:
静脈管、門脈体循環シャント、新生児
【緒言】門脈体循環シャント(PSS)は門脈系と体循環を短絡する血管異常である。PSSには門脈圧亢進に伴う後天性のものと胎生期における血管リモデリング異常により生じる先天性のもの(CPSS)がある。CPSSは高アンモニア血症やガラクトース血症の原因として重要だが、シャントが原因となって死亡した新生児例の報告はない。今回静脈管開存によるCPSSを背景に大腸菌敗血症で死亡した症例を経験したので報告する。【症例】日齢2の男児。在胎37週2日に経膣分娩で出生。出生体重3012g、Apgarスコア1分値9点/5分値9点であった。日齢2より活気不良と低血糖が出現し、ぶどう糖液の経口投与が行われたが改善せず、前医へ搬送となった。前医で高アンモニア血症を認め心臓超音波検査では大動脈縮窄が疑われたため、lipo-PGE1持続投与を行い当科へ新生児搬送された。当科での心臓超音波検査では大動脈縮窄は認めず。高心拍出性心不全の所見および静脈管開存を認めた。門脈形成の評価や他の肝内・肝外短絡の有無を確認するために造影CT検査を予定したが、日齢5にCRPの上昇と白血球数減少、凝固機能悪化を認めた。血液培養では大腸菌が陽性であり、敗血症と診断し、集学的治療行うも日齢7に死亡退院となった。【考察】CPSSは新生児期ではガラクトース血症や高アンモニア血症鑑別に挙がり、数年の経過で肝肺症候群や門脈肺高血圧症に至るとされるが、新生児期の死亡報告はない。CPSSが存在すると肝血流がCPSSによりバイパスされ、肝細網内皮系の感染症に対するフィルター機能が回避される。その結果、血流感染・敗血症性ショックも合わさり死亡に至ったと考えられた。