講演情報

[III-P03-4-08]心室中隔欠損症術後に感染性心内膜炎によると考えられる三尖弁組織の破壊を生じた1例

石黒 想子1, 鈴木 康太1, 藤井 隆1, 松木 惇1, 粟野 裕貴1, 小澤 晃2, 崔 禎浩3 (1.山形大学 医学部 小児科, 2.宮城県立こども病院 循環器科, 3.宮城県立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

感染性心内膜炎、三尖弁逆流、心室中隔欠損症

【背景】術後6か月以上経過し、残存短絡を認めない心室中隔欠損症 (VSD)は感染性心内膜炎 (IE)の低リスク群に分類され、予防的抗菌薬投与の対象とはならない。今回、VSD手術から6か月後以降にIEに罹患したと推察され、三尖弁組織の広範な破壊から三尖弁置換を要した症例を経験したため報告する。【症例】2歳女児。出生後にVSDと診断され、1歳3か月時に心内修復術を施行された。微量の遺残短絡を認めたが1歳9か月時に自然閉鎖し、その直後に母国であるパキスタンに一時帰国した。2歳9か月時に当科を再診した際に易疲労感の訴えがあり、心エコー検査で高度の三尖弁逆流と右心系の拡大を認め、心臓MRI検査で右室拡張末期容量係数155.94 mL/m2、三尖弁逆流率67.26%と高値であったため、3歳1か月時に三尖弁置換術を施行された。術中所見では、三尖弁中隔尖と乳頭筋は消失し、前尖は痕跡的になっていた。母に聴取したところ、帰国中の1歳11か月時に発熱し、1か月程度抗菌薬治療を行っていたことが判明した。以上の経過から、帰国中にIEを発症し三尖弁組織の広範な破壊をきたしたと推察した。【考察・結論】VSD術後6か月以降は、修復に用いた人工材料の内皮化が起こりIEのリスクは低下するとされており、これ以降にIEに罹患した報告は少ない。しかし本症例では術後6か月頃まで遺残短絡を認めており、IEのリスクは通常より高く管理する必要があった可能性がある。またIEのリスク分類は先進国を対象としたデータに基づいており、衛生状態や医療機関へのアクセス等、患者を取り巻く環境に合わせた対応が必要である。本症例は母国への帰国中にIEに罹患したと推察され、IEの予防や診断が困難な状況だった。患者教育の徹底や紹介状の作成、ガイドラインに記載のある患者配布用のIE予防カードの活用等の対策が考えられる。