講演情報

[III-P03-5-02]KCNQ1 R231Hの3例の特徴:若年性心房細動や突然死リスクの高いLQTの早期診断のために

永田 佳敬, 長井 典子 (岡崎市民病院)
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キーワード:

KCNQ1 R231H、LQT1、Af

【背景】KCNQ1 c.692G>A(R231H)はLQT1に加え、若年発症の家族性心房細動(Af)の高度な病原性アレル変異として注目され、早期診断が長期管理に有用な可能性がある。当院で経験したKCNQ1 R231Hの3例から、本変異の早期診断の鍵となる特徴を考察する。
【症例1:15歳女性】濃厚なAfの家族歴あり(母、叔父、母の従妹とその長男、母方祖父)。母の別の従妹は若年突然死。在胎36週に胎児徐脈のため紹介され、在胎38週4日に誘発分娩で出生。HR100bpm程度の徐脈で、軽度QT延長はあるも、1か月(M)時はQTc(F)0.42sec(s)で終診とした。小学校4年生検診でQT延長を指摘され、他院で経過観察の後、15歳時に当院へ再紹介された。安静時はHR45bpm、QTc(B)0.43sで、負荷後3分はQTc(F)0.57s、TMT最大負荷でLQTはないがVPCが散発した。遺伝子検査でKCNQ1R231Hを認め、現在Nadolol継続中である。
【症例2:日齢0男児】胎児徐脈で紹介された。母方曽祖父がAfの徐脈(PMI)、母方祖父にAfとSSSあり。在胎37周5日に予定帝王切開で出生し、V2でQTc(F)0.52s、V5でQTc(F)0.38sとQTdispersionあり、HR100bpmの徐脈だったが、1M時点ではQTc(F)0.37s。遺伝子検査でKCNQ R231H変異が確認され、現在無投薬経過観察中である。
【症例3:5歳男児】症例2の従妹。胎児徐脈のため在胎39周6日に緊急帝王切開で出生。母QT延長症候群既往(QTc0.45s)あり。生後はQTc(F)0.452sでHR90bpmの徐脈だが、1M時はQT(F)0.34s。2歳で一度終診としたが、症例2の診断後に遺伝子検査を行いKCNQ R231H変異を確認した。8歳からpropranolol内服継続中である。全例Afは未発症。
【考察・結語】当院のKCNQ1 R231Hは全例で胎児徐脈と濃厚なAfの家族歴を認め、胎児徐脈および詳細な家族歴聴取が早期診断の鍵となる可能性がある。一方で1M時の心電図ではQT延長は目立たないため注意が必要である。遺伝カウンセリングを含めた長期的なフォローアップが重要と考える。