講演情報

[III-P03-5-04]生後2週間健診が診断契機となった新生児房室回帰性頻拍の一例

元永 貴大, 古田 貴士, 岡田 清吾, 山浦 咲恵, 藤原 万裕, 古澤 法陽, 星出 まどか, 松重 武志, 長谷川 俊史 (山口大学大学院医学系研究科医学専攻 小児科学講座)
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キーワード:

上室頻拍、乳幼児健診、潜在性WPW症候群

【背景】先天性疾患および新生児期発症疾患の早期発見を目的として、山口県宇部市では2016年度から小児科医による生後2週間健診が導入された。【症例】日齢12の男児。前日から哺乳不良、嘔吐、および多呼吸をみとめた。生後2週間健診時に頻拍を指摘され、近医から当院に救急搬送された。当院搬送時は頻脈(220/min)および多呼吸(64/min)をみとめたが、活気は保たれていた。12誘導心電図所見はRR間隔整のnarrow QRS頻拍であり、食道誘導心電図でQRS波の直後にP波をみとめ、short RP’頻拍と診断した。画像検査では心拡大(心胸郭比0.58)および軽度の左室駆出率低下(58%)をみとめ、血液検査でBNP(4,655 pg/mL)およびトロポニンI(0.037 ng/mL)が上昇していた。ATP急速静注では頻拍が停止せず、プロカインアミド 静注後に再度ATPを投与し頻拍が停止した。頻拍停止時の波形はQRSの直後に逆行性P波をみとめ房室ブロックで停止した。鋸歯状波、異所性P波、およびデルタ波はみとめなかった。また、頻拍中にQRS波が左脚ブロックパターンに変化し、その際のRR間隔がわずかに延長しており、Coumel現象と考えた。以上から、順行性房室回帰性頻拍および左側副伝導路を有する潜在性WPW症候群と診断した。フレカイニド100 mg/m2/dayの内服で発作は抑制され、左室駆出率および心拡大は速やかに改善した。【考察】新生児の循環不全徴候は哺乳不良、嘔吐、多呼吸など非特異的なことが多く、新生児期発症の頻脈性不整脈は時に早期発見が困難である。本症例では生後2週間健診で早期に房室回帰性頻拍を診断できたことが良好な転帰につながった一因と考えられた。