講演情報

[III-P03-5-05]NICU入院中に頻拍発作を起こした超低出生体重児の1例

木下 湧暉, 岸本 慎太郎, 佐藤 亮介, 甲斐 陽一郎, 山本 大貴, 井上 真紀, 前田 知己, 井原 健二 (大分大学 医学部 小児科学講座)
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キーワード:

頻拍発作、超低出生体重児、ランジオロール

症例は在胎30週・体重976gで出生した基礎心疾患のない超低出生体重児。日齢45より持続時間15分以内の頻拍発作(心拍数250~300/回)が特に誘因なく出現し反復していたが、日齢53(修正37週・体重1628g)に頻拍発作が3時間以上持続し末梢循環不全を伴った。頻拍発作はATP静脈内注射で一旦停止するも3-5拍で再発した。上室頻拍と診断し、その原因として潜在性WPW症候群や心房頻拍を考えた。追加治療が必要な状態であったが、修正37週・体重1.6kgのため、治療選択に苦慮した。今回、われわれは、万が一有害事象が発生してもすぐ中止することで重篤な影響を回避できると考え、超短時間作用型・高β1選択性のβ遮断薬であるランジオロールを使用することとした。血圧・心拍数をモニタリングしながら、0.5μg/kg/minで開始し、30分ごとに漸増したところ、2.0μg/kg/minの時点で頻拍発作は停止、洞調律に復帰した。ランジオロールをプロプラノロール2mg/kg/dayへ置き換えたが、頻拍発作を繰り返すため、フレカイニド50mg/m2/dayを追加したところ頻拍発作は見られなくなった。今回の治療経過中に有害事象は発生しなかった。NICU入院中の児の血行動態に影響ある頻拍発作の報告では発生率は0.19%と少ないことや、低出生体重児ではアデノシン三リン酸・β遮断薬など保険適応のある注射薬はないことなどから、NICU入院中の低出生体重児の頻拍発作の治療方法は確立されていない。本症例の治療経験を文献的考察を交えて報告する。