講演情報
[III-P03-5-08]冠動脈瘻治療後遠隔期に心房頻拍を合併した1例
○赤塚 祐介, 木村 寛太郎, 高橋 誉弘, 佐藤 浩之, 西山 樹, 加護 祐久, 田中 登, 原田 真菜, 福永 英生, 東海林 宏道 (順天堂大学 医学部 小児科)
キーワード:
心房頻拍、術後遠隔期合併症、心筋リモデリング
【背景】開心術後に生じる心房瘢痕や、左右短絡によって生じた心房負荷による心房筋リモデリングは遠隔期において心房性不整脈の発生に関与する。心房性不整脈は、先天性心疾患(CHD)患者における有害事象のリスクを2倍にするとも報告されている。成人CHD患者の心房性不整脈の発生率は15%とされるが、小児期発症は稀である。今回、冠動脈瘻治療後遠隔期に心房頻拍を合併した小児例を経験したので報告する。【症例】13歳男子。9ヶ月時に心房中隔欠損閉鎖術、冠動脈瘻閉鎖術を施行し、11歳時に冠動脈瘻の残存瘤に対するコイル塞栓術を施行した。13歳より胸痛および動悸が出現し、安静時心電図では異常所見を認めなかったが、Holter心電図で上室頻拍が捕捉された。心臓電気生理学検査(EPS)では、房室結節二重伝導や副伝導路は認めず、CARTO V8および多極マップカテーテル(OPTRELL)を用いてactivation mapを作成したところ、下大静脈-三尖弁輪間峡部(CTI)を緩徐伝導路とし、右房前面を上行し、右房背側から下行する右房内マクロリエントリが確認された。またvoltage mapでは右房全体に低電位領域が目立ち、右房心筋のリモデリングが示唆された。CTIを回路に含む心房頻拍と考え、同部位へ線状に焼灼線を加えたところ頻拍は消失した。治療後は頻拍発作の再燃なく経過している。【考察・結語】本症例は、瘢痕からの撃発活動によるものではなく、心房負荷によって生じた心筋リモデリングによる心房内マクロリエントリが心房頻拍の機序と考えられた。また心房中隔欠損症と冠動脈瘻による心房負荷の増大がリスク因子であったと推測された。心房負荷を生じる疾患群では、若年においても心房性不整脈を合併することがあり、動悸症状がある場合にはHolter心電図による捕捉が重要である。またEPSによる診断、心筋焼灼による治療が予後を改善すると考えられる。