講演情報

[III-P03-5-10]心房中隔欠損症における心電図デジタルデータを用いたP波定量解析の有用性

熊本 崇1, 實藤 雅文1, 土井 大人1, 宇木 望2, 松尾 宗明1 (1.佐賀大学医学部附属病院 小児科, 2.佐賀大学医学部附属病院 検査部)
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キーワード:

心房中隔欠損症、P波、心電図デジタル解析

【背景】本邦において、心房中隔欠損症(ASD)は学校心臓検診を契機に発見されることが少なくない。その心電図所見として、不完全右脚ブロックや四肢誘導のcrochetageパターンなどのQRS波形の特徴が知られているが、いずれも特異度が高い一方で感度が低いという課題がある。一方で、P波高についてもASD検出に関する報告があるが、QRS波形と比較してさらに感度が低く、実用性に乏しい。P波の小ささや始点・終点の判断の難しさがその要因と考えられる。【目的】ASD症例のP波を詳細に解析することで検出率の向上を図る。【方法】対象は2010~2022年に当院でASDと診断された45例(条件:二次孔欠損、閉鎖術前の4~9歳時心電図あり、他の心形態異常や染色体異常なし)。対照群として、ASD群と年齢をマッチさせた心臓に構造的・機能的に異常のない45例を選定した。心電図(FCP-8800, フクダ電子)をデジタルデータとして抽出しMATLABで解析した。そして、P波の開始点・ピーク点・終了点を同定し、ASD群と対照群を後方視的に比較検討した。【結果】ASD群の平均年齢は6.6±1.7歳で、男児22例、女児23例、欠損サイズは<5mmが9例、5-15mmが18例、>15mmが18例であった。V3誘導におけるP波高が最も高い弁別能を有し、ROC曲線下面積は0.886であった。特に、欠損孔サイズが5mm以上の場合には、ROC曲線下面積は0.954に達し、P波高0.115mVを閾値とした場合、感度0.83、特異度0.96を示した。さらに、小児循環器専門医による心電図総合判定(感度0.53、特異度0.98)と比較しても、本解析方法が優れていた。【結語】心電図データをデジタル解析することで、P波高≧0.115mVがASD検出において高い感度と特異度を有することが示された。本手法は従来法に比べてASDの検出率を大幅に向上させる可能性がある。