講演情報

[III-SY7-5]海外留学を活かした小児循環器科医のキャリア形成の経験

松井 彦郎 (榊原記念病院 小児周産期診療部)
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キーワード:

海外留学、キャリア形成、資格取得

「きちんとした小児循環器医になりたい」。その目標の中、小児循環器領域において長年の間人材育成・キャリア形成のあり方が系統的に示されることはなかった。「頑張る」という言葉の傘の下、少なくない小児循環器医・心臓外科医が小児循環器の道から離れていく姿をこれまで多くの人がみつめてきた。
「なぜ多くの医師が海外留学をするのか?」。自身のキャリアパスが見えない中、そこに「答えがあるかも」との期待を胸に膨らませて英国留学の路をチャレンジする事となった。2006年から2010年に英国Imperial College LondonにFetal Cardiologyで留学し、臨床・臨床研究・基礎研究に従事した。豊富な臨床経験・臨床研究・英国臨床資格・英国小児循環器専門医・基礎研究・論文作成・Doctor of Philosophyの経験を得ることができた。
英国の医療をリードする指導者達は、押し並べて「一流とはどうあるべきか」を具現化していた。第一に人格に優れていることが基本として、人としての対応が優れていた。医療者としての実績・研究・指導も模範的であり、本質をついていた。眼前の本物と比較すると自己は粉々に粉砕され、焦燥感・挫折感・敗北感が溢れ、自らのいたらなさを痛感できた。「留学は海外を見に行くのではないよ、日本と自分を見にいくのだよ」の先輩の言葉が突き刺さった。
海外留学は自らを成長させるきっかけとなる「一つの機会」であった。自身の位置を謙虚に自覚し、人格を育むことがキャリア形成の核となると感じた。医師としての人生を自己満足で終わらせないために、困難から逃ずに自分と向き合うために、「人」として真っ当に行動する事が鍵であるかもしれない。
小児循環器におけるキャリア形成とは、人格形成を基本とした自己実現を目指した過程である。その中で海外留学が一つの役割を果たすことができれば良いと考える。