講演情報
[III-SY8-2]製品開発につながるアカデミアと企業のコラボレーション
○根本 慎太郎 (大阪医科薬科大学 医学部 外科学講座胸部外科学)
キーワード:
医療機器開発、科研費、補助金
我々小児循環器を生業とする臨床医は、日々の診療の中で常に課題に直面している。その解決のために“こんな医療機器があったらなあ!”とのアイディアが浮かんでは来るものの、海外からの成人用医療機器を適応外で細々と使って耐え忍んでいる。国の内外の企業に掛け合ってみても“臨床的・社会的意義は理解できるが、小児ではビジネスにならないので無理です”と相手にしてくれることはない。必死になって科研費を獲得しても、開発には程遠くin vitroまたは動物実験までしかできない。あきらめるしかないのか?企業は実用化へのカネ、ヒト、ジカンの投資から事業化して採算性を確保することがゴールである。我々医師は臨床的・社会的解決がゴールであるが、その成就には企業目線で開発を見直してみることが必要である。すなわち“事業化⇒マーケティング⇒償還価格決定⇒薬事承認⇒治験⇒非臨床試験による有効性と安全性の証明⇒製品規格決定と量産体制(工場と品質保証)⇒材料選定と確保⇒ベンチおよび動物試験によるコンセプト検証と知財確保⇒試作品作製⇒コンセプト確定(ブレインストーミング)⇒全世界と全関係が掲げる課題”とゴールから辿ったスタートラインを見極めることが肝要である。コンセプト検証までは科研費で対応可能であるが、それ以降は莫大なカネ、ヒト、ジカンが必須である。ただし強固な産学コンソーシアムが組めると、研究資金の先の事業化推進への国の大型補助金(経済産業省、AMED)を獲得するチャンスが見込める。小さな成功を積み上げ事業予見性が出てくると企業も本格的に投資を始める。本発表では、2024年6月に上市された自己組織化誘導ハイブリッドニットである心血管修復パッチでの開発資金獲得におけるアカデミアの役割を提示する。