講演情報
[III-SY8-4]科研費獲得に向けた申請書改訂のポイントと成功要因
○山澤 弘州, 武田 充人 (北海道大学大学院医学研究院 小児科)
キーワード:
科研費、申請書、研究計画
科研費獲得の適否は申請書にかかっている。本セッションでは、不採択となった申請書(通過前)と採択された申請書(通過後)を比較し、改善のポイントを分析した。第一に、研究目的の明確化とストーリー性の強化である。通過前の申請書では「筋ジストロフィー心臓併発症はミトコンドリア機能改善で治療できるか?」という研究課題が設定されていたが、仮説の根拠や治療への展望が曖昧であった。通過後では「末梢血単核球(PBMC)ミトコンドリア機能を筋ジストロフィーの重症度評価・治療に応用する」と具体化し、研究背景から期待される成果までを明確にしたことで、研究の意義が伝わりやすくなった。第二に、研究の新規性と独自性の強調である。通過前では我々のもつ既存技術の応用に焦点が当たっている様に見えたが、通過後ではPBMCミトコンドリア機能と筋ジストロフィーの病態に関連はあるかという未解明の学術的問いを明確化し、他の研究との差別化を図った。第三に、研究計画の具体性と実現可能性の明示である。通過前の申請では研究の流れが大まかで、測定手法や解析方法の詳細な記述が不足していた。一方、通過後では実験機器、測定項目、データ解析方法を具体的に記述した。更に予備実験の結果を記載することで実現可能性を強調した。それは研究経費についても同様で、具体性を持たせることで現実味がでた。更に本研究のサポートになるであろう周囲の研究環境が充実していることを記載することで実現性を持たせた。さらに、研究の社会的意義と波及効果の提示もポイントの一つと考える。通過後の申請書では、PBMCミトコンドリア機能をバイオマーカーとして活用する可能性を示し、将来的な診断・治療法開発への可能性を強調した。本発表ではこれらの具体的な改善プロセスと成功要因を共有し、今後の研究費申請の一助となればと考える。