講演情報

[I-CSY3-1]遺伝子診断に基づくQT延長症候群の治療戦略

小澤 淳一 (長岡赤十字病院)
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キーワード:

QT延長症候群、遺伝学的検査、治療

QT延長症候群 (long QT syndrome; LQTS) は、心電図でのQT間隔の延長と心室不整脈による失神や突然死を特徴とする遺伝性不整脈疾患である。LQTSは1957年にJervellとLange-Nielsenにより「難聴心臓症候群」として最初に報告され、その後1963年にRomanoら、1964年にWardにより難聴を伴わない症例 (Romano-Ward症候群) が報告された。それから約30年後、1995年頃にKCNQ1KCNH2SCN5A遺伝子の病的バリアントが、それぞれLQTS 1型、2型、3型 (LQT3) の原因であることが明らかとなった。その後、LQT3に対するメキシレチン治療に代表されるように、遺伝型に基づく治療戦略が展開されるようになった。このようにLQTSは遺伝学的・分子学的異常と臨床的表現型 (心電図異常・心室不整脈) との関連を解明する鍵となった疾患であり、イオンチャネル病の「ロゼッタストーン」とも称される。これまでに複数の関連遺伝子が報告されており、病的バリアントを発現させた動物モデルや培養細胞に加え、近年では患者由来iPS心筋細胞を用いた機能解析も進み、分子学的メカニズムの解明や薬効評価に寄与している。
わが国では2008年より遺伝学的検査が保険収載され、現在は主に次世代シークエンサーを用いたパネル解析が主流となっている。各遺伝型、さらには病的バリアントに応じた生活指導や選択的治療が行われている。2026年に改定された遺伝性不整脈の診療に関するガイドラインでは、運動または競技スポーツ参加の目安が示されており、小児期の管理指導区分についても今後さらなる議論が必要である。生活指導や十分な薬物治療にも関わらず致死性不整脈のコントロールが困難な場合には、ペースメーカ、ICD、左交感神経節切除術といった非薬物治療が選択される。
本発表では、当院での治療経験も踏まえて、遺伝子診断に基づくQT延長症候群の治療戦略について概説する。