講演情報
[I-DPAL-4]先天性心疾患における心臓刺激伝導系異常の発生機構 -左右軸形成と房室伝導系形成の解析-
○城尾 邦彦1,2, 松岡 良平1, 八代 健太3, 塩瀬 明2, 目野 主税1 (1.九州大学大学院 医学研究院 発生再生医学分野, 2.九州大学病院 心臓血管外科, 3.京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体機能形態科学)
キーワード:
心臓刺激伝導系、房室伝導系、Heterotaxy
【背景】心臓刺激伝導系(cardiac conduction system; CCS)は、左右・背腹の体軸に沿って非対称に配置される。左右軸形成異常に起因するheterotaxy syndromeでは、複雑心奇形に加え、洞房結節および房室伝導系(atrioventricular conduction system; AVCS)の位置・形成・統合性異常を高頻度に認めるが、その発生機構は不明である。【目的】左右軸の実行因子Pitx2に着目し、左右軸がAVCSの空間的配置と統合性を制御する機構を解明する。【方法】左右軸は左側側板中胚葉(LPM)においてNodalにより誘導されるPitx2発現により確立される。Nodal制御因子であるCrypticおよびLefty1遺伝子欠損マウスを用い、分子マーカー解析およびcardiac voltage mappingによりCCS発生過程と機能を解析した。さらに、Pitx2-17 Creマウスによる左側LPMの細胞系譜解析と、Pitx2欠損胎仔心の単一細胞RNAシーケンシング(scRNA-seq)データ再解析を行った。【結果】右側相同モデルのCryptic欠損胚では、両側性洞房結節形成と異所性前方房室結節・房室束形成を認め、Pitx2発現の低下を伴った。scRNA-seq解析ではPitx2欠損心において房室結節・房室束クラスターが拡大しており、Pitx2のAVCS分化抑制作用が示唆された。一方、左側相同モデルのLefty1欠損胚では洞房結節低形成および房室結節-房室束の分断を認め、Pitx2の異所性発現を伴った。Voltage mappingでは房室伝導障害を認め、形態異常に応じた機能変化が示された。細胞系譜解では、Pitx2陽性左側LPM子孫細胞は房室管上部および心室中隔頭腹側稜に分布し、AVCS発達を選択的に抑制することが示唆された。【結論】左側LPMの子孫細胞は頭腹側領域に配置されてPitx2を持続発現し、CCSの発達抑制によりAVCSの非対称な空間配置を形成する。本研究は左右軸情報の背腹側転換がAVCS配置を制御することを示し、先天性心疾患におけるCCS異常の分子機構を説明する新たな発生学的モデルを提示する。
