講演情報
[I-OR11-03]川崎病診断時における血液凝固系異常と冠動脈後遺症の関連
○大西 佑治, 元永 貴大, 古田 貴士, 岡田 清吾, 長谷川 俊史 (山口大学大学院 医学系研究科医学専攻 小児科学講座)
キーワード:
川崎病冠動脈後遺症、血液凝固系異常、アンチトロンビンIII
【背景】血管炎症候群では免疫複合体や炎症性サイトカインが血管内皮細胞を傷害し、凝固カスケードが活性化することで血液凝固系異常を生じる。川崎病では診断時の血液凝固検査値の異常がガンマグロブリン静注不応や川崎病ショック症候群の予測マーカーとして報告されている。一方で、血液凝固系異常と冠動脈後遺症の関連に関するエビデンスは限定的である。【対象・方法】2011年1月から2025年12月までに山口大学医学部附属病院で初期治療を行った川崎病患者のうち、データ欠損例を除外した351例を対象とした。診療録に基づき、診断時の年齢、性別、血液検査所見および冠動脈後遺症の有無について後方視的に検討した。【結果】年齢0-213か月(中央値26か月)、男児222例(63.2%)であった。26例(7.4%)に冠動脈一過性拡大を認め、11例(3.1%)に発症1か月後の冠動脈拡大(冠動脈後遺症)を認めた。冠動脈一過性拡大合併例は冠動脈非拡大例と比較し、APTTおよびPT-INRが延長し(APTT 37.4秒 vs. 34.9秒、p=0.003;PT-INR 1.29 vs. 1.13、p<0.001)、アンチトロンビン(AT)III活性が低下していた(88.8% vs. 105.6%、p<0.001)。また、冠動脈後遺症合併例は非合併例と比較し、PT-INR延長(1.30 vs. 1.13、p=0.003)およびATIII活性低下(87.4% vs. 105.5%、p<0.001)を認めた。冠動脈後遺症を目的変数とした多変量解析では、ATIII活性が独立した関連因子であり、ROC解析におけるAUCは0.851であった。【考察】川崎病における血液凝固系異常、特にATIII活性低下が冠動脈後遺症と関連している可能性が示唆された。ATIIIは抗凝固作用に加え血管内皮保護作用を有しており、炎症に伴う血液凝固カスケード活性化によるATIII消費が川崎病冠動脈後遺症の進展に寄与する可能性が推察された。
