講演情報
[I-P03-01]心筋症における空間的QRS-T夾角と臨床経過
○佐藤 啓, 松尾 悠, 工藤 諒, 西村 和佳乃, 齋藤 寛治, 滝沢 友里恵, 桑田 聖子, 中野 智, 齋木 宏文 (岩手医科大学附属病院 小児科)
キーワード:
心筋症、ベクトル心電図、突然死
【背景】心筋症は小児における心不全、突然死の原因として重要であり、心イベント発祥前の早期発見と治療管理が期待される。近年、空間的QRS-T夾角(spQRS-T)の異常が心室性不整脈や心筋障害と関連することが報告されており、心筋症診断や心イベント予測指標としての有用性が指摘されている。【症例】2013年9月から2024年12月に当院で心筋症と診断した14例(HCM 8例, DCM 2例 , ARVC 4例)を対象とし、診断前の学校検診、初診時、診断以降の標準12誘導心電図からspQRS-Tを算出し、臨床経過との関連を後方視的に検討した。心臓検診などスクリーニング検査で異常のなかった症例 15例を正常対照群とした。【結果】心筋症群の初診時spQRS-TはDCMとHCMでは一部で開大を認めたが、ARVCでは全例で開大を認めなかった(中央値:HCM 26.8, DCM 148.5, ARVC 25.2)。正常対照群のspQRS-T(小学校低学年 26.9±19.8, 小学校高学年 34.7±23.5, 中学生 37.9±21.1, 高校生 59.8±6.6)と比較すると、HCM群では中学生で有意に開大していた(106.9±53.3[p=0.0382])。また診断前の学校検診では、DCMの1例ですでにspQRS-Tが開大していたが、ARVCでは診断前からspQRS-Tの開大傾向はなく(ARVC 13.8±0.9 vs DCM 86.9[p=0.0006])、診断後も開大なく経過していた。一方で興味深いことにARVCで心肺停止(CPA)を認めた2症例では、イベント前にかけてspQRS-Tの開大傾向を認めた(症例1:89.9[1年前]→114.8[イベント直前]→CPA, 症例2:64.9[1年前]→103.8[イベント直前]→CPA)。【考察】症例数が少なく統計学的検討には限界があるが、成人領域ではspQRS-T開大と心イベントリスクの関連が報告されている。小児期ARVCの管理において、spQRS-Tの経時的な評価が心イベント予測に有用となり得る。【結論】心筋症におけるspQRS-Tは早期診断や致死性イベント予測に寄与する可能性がある。
