講演情報

[I-P16-05]Duchenne型筋ジストロフィーにおける一過性急性心筋傷害の症例から学ぶ、心筋の経時的変化と治療開始時期の再考

中垣 麻里1,2, 小山 智史1, 竹中 颯汰1, 安田 昌広1, 木村 瞳1, 篠原 務1 (1.名古屋市立大学大学院 医学研究科 新生児・小児医学分野, 2.愛知医科大学 小児科)
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キーワード:

DMD、急性心筋傷害、心不全治療

【背景】Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)における心筋障害は、徐々に進行し、多くは10代で左室収縮能低下として心筋症を発症する。一方で突然の胸痛を認め、急性心筋傷害を発症する報告例も散見されるが、その病態の意義や治療開始時期への考察は明確になっていない。【症例】DMD男児が10歳の時、入眠時に長期間持続する胸痛を訴えた。夜間に受診し、著明なトロポニン(TnT)上昇と心電図で下壁・左側誘導でのST上昇を認めた。心エコーでは全周性に心収縮は良好であった。入院翌日には心電図でのST上昇部位はQ波へと変化した。心臓カテーテル検査で冠動脈狭窄はなく、心機能も良好であった。右室心筋生検病理ではすでに心筋壊死と置換性線維化を認めたが、心筋浮腫や炎症所見は認めなかった。胸痛は次第におさまったが、入院3日目にLVEFは45%まで低下した。心臓造影MRI(cMRI)検査では心電図所見に一致した左室下壁・側壁の基部~中央部壁に遅延濃染を認めた。以上から、DMDによる急性心筋傷害と診断した。慢性心不全薬ACE阻害剤とβブロッカーを開始し、心機能は徐々に改善し、発症1年後には正常にまで改善した。13歳時に再び心機能低下を認め以後、不可逆的となり、現在16歳でLVEFは45-50%である。【まとめ】DMDにおける本症例のような急性心筋傷害を早期に捉える上で、心電図やTnT値は極めて有用であった。さらに心筋生検やcMRI検査の結果より、DMD心筋症の不可逆的な心機能低下が出現する以前に、すでに心筋の置換性線維化を認めていることが分かった。本症例はDMDの急性心筋傷害の時点での臨床データを詳細に捉え、さらに長期的な経過を追えた貴重な症例であり、DMD心筋症の経時的な病態変化をより理解し、心機能低下前の治療開始時期について考察するきっかけになった。