講演情報

[II-JMSF-2]家系遺伝子解析から探る先天性心臓流出路異常の発症機構の解明

井上 忠1,2, 内田 敬子1,3, 古道 一樹1,4, 山岸 敬幸1,5 (1.慶應義塾大学 医学部 小児科, 2.東京都済生会中中央病院, 3.東京医科大学 細胞生理学分野, 4.東京都立大塚病院 小児科, 5.東京都立小児総合医療センター)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

遺伝解析、心臓発生、心臓流出路

【背景】先天性心臓流出路異常は小児期から成人期まで生涯医療を要し、近年、次世代への遺伝を考える重要性も増している。私たちは総動脈幹症(TA)家系を発端に、TMEM260 c.1617del (Keio-Tohoku variant: KTv)が、日本人TA患者の約3割の原因であることを明らかにした。また、Fallot四徴症(TOF)とTAの姉妹例より、TOFの遺伝学的原因として知られるNOTCH1FLT4の二重ヘテロバリアントを検出した。そこで、日本人の先天性心臓流出路異常における遺伝子解析とマウスの解析から、発症分子機構の解明を試みた。【方法】22q11.2欠失など、既知の原因を除いた先天性心臓流出路異常253例(TA 31例、TOF 222例うち肺動脈閉鎖(PA-VSD)85例)を対象に、ロングレンジPCRおよびエクソーム解析によりTMEM260NOTCH1FLT4の遺伝子バリアントを解析した。さらにTmem260ホモ接合ノックアウト(KO)マウスとNotch1/Flt4二重ヘテロ接合KOマウスを作製した。【結果】TMEM260両アリルの機能喪失型バリアントが、TAの23% (7/31例)、PA-VSDの2.4% (2/85例)で同定された。また、Tmem260ホモ接合性KOマウスは心臓流出路異常を呈した。一方、NOTCH1バリアントはTA 1例、TOF 4例で認められ、FLT4バリアントはTOF 8例で認められた。NOTCH1/FLT4バリアントの二重ヘテロ接合がTA 2例、PA-VSD 1例に同定された。Notch1/Flt4二重ヘテロ接合KOマウスでは、単独KOマウス(Notch1:0%、Flt4:17%)と比べ高頻度(50%)に心臓流出路異常が認められた。【結語】先天性心疾患の家系例は従来まれとされてきたが、日本におけるTAではTMEM260バリアントによる常染色体潜性遺伝の家系例が多いことが示唆された。また単独でTOFの原因となるNOTCH1FLT4の両バリアントを有すると、心臓流出路異常の重症度が増すことがヒトとマウスの解析により明らかになった。心臓流出路異常の新たな発症機構解明ならびに遺伝カウンセリングの充実に繋がることが期待される。