講演情報

[II-JMSF-4]心筋緻密化障害の病態解明

廣野 恵一, 西山 真未, 坪井 香織里, 寳田 真也, 岡部 真子, 仲岡 英幸, 伊吹 圭二郎, 小澤 綾佳 (富山大学附属病院 小児科)
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キーワード:

心筋緻密化障害、サルコメア、単一細胞トランスクリプトーム

心筋緻密化障害(LVNC)は、左室心筋の緻密層と非緻密層の2層構造を成す心筋症である。LVNCは心筋症の中で3番目に多い疾患であり、主に小児期に発症し、その大部分は生後1年以内に発症する。LVNCの臨床症状は多様であり、心不全、不整脈、血栓塞栓症などを含み、これらが相まって予後不良の一因となっている。このような早期発症と重篤な臨床経過は、胚発生期におけるLVNCの病因解明が極めて重要であることを示唆している。しかし、本疾患は遺伝的・表現型的に極めて多様であり、その分子病態の本質は十分に解明されていない。

近年、MYH7をはじめとするサルコメア関連遺伝子異常が高頻度に同定され、遺伝学的背景と心筋発生異常との接点が注目されている。本講演では、患者由来MYH7変異導入マウスを用いた解析から、LVNCの病態を「心筋壁形成の時空間的破綻」として再考する。とくに単一細胞トランスクリプトーム解析により、胎生中期E15.5が病態形成の鍵となる時期であり、この段階で未熟心筋細胞の増加、心内膜・心外膜細胞の減少、細胞増殖動態の変化が生じることを示した。さらに、酸化的リン酸化、脂肪酸β酸化、NAD+代謝などの代謝経路異常が、構造異常に先行して出現することから、LVNCは発生学的・解剖学的異常に加え、代謝制御異常を伴う疾患として理解すべきと考えられた。この知見は、LVNCの本態が単なる形態形成異常ではなく、心筋発生過程における代謝プログラムの破綻に起因することを示唆する。

本講演では、遺伝子変異の病態的意義から単一細胞レベルの発生学的メカニズムまでを統合的に論じ、臨床心臓発生学としてのLVNC病態解明の最前線を報告する。