講演情報
[II-OR13-06]栄養障害のない生後3か月の超低出生体重児に認めたセレン欠乏による二次性の拡張型心筋症
○大原 健太郎, 鍵山 慶之, 大津 生利衣, 山川 祐輝, 嶽間澤 昌史, 高瀬 隆太, 木下 正啓, 寺町 陽三, 須田 憲治 (久留米大学 医学部 小児科学講座)
キーワード:
セレン欠乏、拡張型心筋症、超低出生体重児
在胎24週0日、体重656g(+0.05SD)で出生した生後3か月の男児、出生後に呼吸窮迫症候群に対する人工呼吸管理は行ったが脳出血や壊死性腸炎は来さずに経過した。経腸栄養量は経管栄養を併用しながら生後10日に100ml/kgを超え、発症前は完全母乳栄養(150ml/kg/day)で体重増加は+25g/dayと良好であった。退院待機中の修正40週4日に多呼吸、陥没呼吸が出現し、心エコー図検査でLVDd 36mm(+12.6SD)、LVEF 20%と左室拡大および収縮障害、軽度の僧帽弁逆流を認めた。循環動態の破綻はなく、冠動脈異常を含めた先天性心疾患はなく、後方視的に確認するとLVEFは2か月前には正常値であったが徐々に悪化していたことから二次性心筋症の鑑別を行い、抗心不全薬の内服に加えてビタミン、カルニチン、セレンの補充を開始した。検査結果より血清セレン値低値(2.9μg/dL≦6.0μg/dL)が明らかとなったがその他の二次性心筋症の原因は指摘されなかった。セレン値正常化後、2週間ほどでLVDd24mm(+3.5SD)、LVEF 48%まで改善し、NT-pro BNPも発症時114,423.4 pg/mLから739.9pg/mLまで低下した。経過中に母乳分泌が減量し人工乳に置換してもセレンの静注製剤を中止するとセレン低下(3-4μg/dL)するため経口栄養剤でセレン補充を継続し退院した。セレン補充は離乳食の確立後に中止し、心不全発症から約1年の現在はセレン低下なく心機能障害や心不全症状なく経過している。セレン欠乏症の診断基準は(1)心筋障害を含む欠乏症状、(2)他疾患の除外、(3)セレン低値、(4)セレン補充による症状改善によってなされる。セレン欠乏は長期の経静脈栄養などの栄養障害状態で見られるが、セレンの母体からの移行は妊娠後期に集中するため早産児はセレン欠乏のリスクが高く、未熟児の心筋症ではセレン欠乏は重要な鑑別疾患である。本邦で市販される人工乳はセレン含有量が低めで、人工乳栄養でもセレンの供給が十分でない可能性がある。
