講演情報
[II-P19-01]平均では語れない小児IPAH/HPAH:JAPHR縦断解析から見た治療反応
○細川 奨1,2, 石井 卓2, 永井 礼子3, 内田 敬子4,5, 住友 直文5, 石田 秀和6, 高月 晋一7, 小垣 滋豊8, 山岸 敬幸5,9, 土井 庄三郎2,10 (1.武蔵野赤十字病院 小児科, 2.東京科学大学 小児科, 3.北海道大学 医学部 小児科, 4.東京医科大学 細胞生理学, 5.慶應義塾大学 医学部 小児科, 6.大阪大学大学院 医学系研究科 小児科学, 7.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 8.大阪急性期・総合医療センター 小児科, 9.東京都立小児総合医療センター, 10.東京医療保健大学 立川看護学部)
キーワード:
小児IPAH/HPAH、治療反応、JAPHR
【背景】小児特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)は進行性疾患であり、現行ガイドラインでは中等症以上に肺血管拡張薬の併用療法、重症例ではPGI2静注の早期導入が推奨されている。2025年本学会にて、JAPHRに登録された小児IPAH/HPAHは成人例と比較して重症度が高く、侵襲的治療が多いことを報告した。本研究では、縦断データを用いて肺血管抵抗係数(PVRi)の個別治療反応の検討を目的とした。【方法】JAPHRに登録された小児IPAH/HPAHのうち、診断時および1回以上のフォローアップでPVRiおよび平均肺動脈圧(mPAP)が評価された症例を対象とした。初回から最終評価までのΔPVRiおよびΔmPAPを算出し、症例ごとの変化を検討した。【結果】PVRiおよびmPAPが2時点以上得られた7例を解析した。ΔPVRiは-3.3~+6.5、ΔmPAPは-17~+10 mmHgの範囲で分布し、症例ごとに改善、不変、悪化が混在していた。集団平均では大きな変化を示さなかったが、個々の治療反応には大きなばらつきが認められた。多くの症例でERA、PDE5阻害薬、PGI2製剤による多剤併用療法が継続または強化されていた。特にPGI2静注導入群ではΔPVRiの分布が広く、治療反応の多様性が顕著であった。ΔPVRiが上昇した4例はいずれも診断時より高PVRi・高mPAPを呈する重症例が多かった。PGI2静注導入例における反応のばらつきは、治療薬そのものの差というより、重症小児PAHの中に反応性の異なる集団が存在することを反映している可能性が示唆された。【結論】小児IPAH/HPAHにおいて、平均値では捉えられない個別治療反応の多様性が明らかとなった。悪化に見える症例の多くは診断時から重症であり、治療抵抗例の存在が示唆される。一方で改善を示す症例も存在することから、早期診断と適切な層別化が重要である。今後、治療開始前と治療後の経時的データ登録を充実させることで、日本発のエビデンス創出と治療最適化につながることが期待される。
