講演情報

[II-PD6-2]小児ブルガダ症候群の臨床像と性差

今村 知彦1, 牧山 武2, 小澤 淳一3, 青木 寿明4, 小島 拓郎5, 吉永 正夫6, 大野 聖子7, 鈴木 博8, 住友 直方5, 堀江 稔9 (1.京都大学大学院 医学研究科 社会健康医学系 専攻予防医療学分野, 2.京都大学大学院 医学研究科 循環器内科, 3.新潟大学医歯学総合病院 小児科, 4.大阪母子医療センター 循環器内科, 5.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科, 6.鹿児島医療センター 小児科, 7.国立循環器病研究センターメディカルゲノムセンター, 8.魚沼基幹病院 小児科, 9.滋賀医科大学 循環器内科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

ブルガダ症候群、性ホルモン、思春期

ブルガダ症候群(BrS)は、主に中年期に心室性不整脈を引き起こす遺伝性不整脈疾患である。発症頻度は小児で低く、20-40代で上昇する一方、致死的不整脈イベント(LAE)の頻度は小児の方が成人より高い。成人で認める男性優位の性差は小児では認められない。本研究では、小児と成人のBrSの病態の違いを明らかにするため、小児BrSの臨床的特徴や心電図所見の経時的変化について検討した。
小児BrS患者の発端者57名(男性42名、女性15名)を解析対象とした。診断の契機は、症状(44%)、学校心臓検診(33%)、他疾患の定期検診での指摘(23%)であり、診断時点で12名がLAE、11名が失神、2名が動悸を経験していた。SCN5A病的バリアント陽性率は46%で、成人の既報(10-30%)より高かった。自然発生型coved型上昇は93%に認めた。LAE発生率は5.6%/年と高く、LAE発生率に性差はなかった。思春期前後の性差に着目すると、思春期前では新規診断例の42%が女性であったのに対し、思春期後は0%であった。女性のLAEは思春期前に限られ、思春期後には認めなかった。一方、男性では全年齢でLAEの発生率に大きな変化はなかった。思春期前後で連続した心電図データの解析では、女性9名中5名で思春期後にcoved型心電図からsaddleback型または正常型へ改善したが、男性では認めなかった。単変量ロジスティック回帰分析では、fragmented QRSやLAEの既往といった成人でも報告されているLAEのリスク因子が同定された。経過中、男性2名が内服治療や適切作動の甲斐なく心室細動ストームで死亡した。この死亡例のキニジン投与量は生存例より少量であった。
以上より、女性BrS患者では思春期後にLAEが消失し、約半数で心電図所見の改善を認めた。従来、BrSの性差は男性ホルモンの影響と考えられてきたが、女性ホルモンが保護的に作用する可能性が示唆された。今後、小児BrS患者のリスク層別化および薬物治療に関するさらなる検討が必要である。