講演情報
[III-EDS-3]先天性心疾患児における感染症対策の最前線
○上野 健太郎 (鹿児島大学病院 小児科)
キーワード:
先天性心疾患、感染予防、予防接種
先天性心疾患(CHD)診療では、形態診断、血行動態評価、手術・カテーテル治療後の管理に焦点が当たりやすい。一方で、感染症はCHD児の循環動態を急速に悪化させ、生命予後や生活の質に影響し得る重要な併存リスクである。CHD児の発熱は、単なる「小児のよくある感染症」として経過観察できるものから、感染性心内膜炎(IE)、敗血症、デバイス関連感染など、急速な血行動態の破綻を招き得るものまで幅広い。重要なのは、すべての発熱を過剰に恐れることではなく、患者の解剖、血行動態、人工物・デバイス、免疫学的背景から「見逃してはいけない発熱」を層別化する視点である。本講演では、小児循環器医が日常診療の中で知っておくべき感染症対策を、近年の知見を交えて概説する。IE対策では、抗菌薬予防投与の適応だけでなく、高リスク群の同定、口腔衛生管理、原因不明の発熱時における血液培養・心エコー評価、多職種連携が重要である。無脾症候群・脾機能低下例では、莢膜菌による侵襲性細菌感染症が急速に重症化し得るため、予防接種に加え、発熱時の迅速受診、早期抗菌薬投与、緊急内服抗菌薬、家族教育を組み合わせた実践的管理が求められる。さらに、RSウイルス感染予防における長期間作用型モノクローナル抗体の導入と心肺バイパス後の再投与、Fontan術後遠隔期や蛋白漏出性胃腸症に伴う液性免疫低下・ワクチン獲得抗体の減衰、麻疹・百日咳などワクチンで予防可能な疾患の再興に対するキャッチアップ接種にも言及する。CHD児の感染症対策では、単なる「抗菌薬の選択」にとどまらず、重症化を予測し、適切な受診行動を設計し、家族・学校・地域医療と共有する包括的な安全管理が肝要である。
