講演情報

[III-PL-1-2]同じ志をもつ仲間と「出会いに育まれた心臓発生研究」

山岸 敬幸 (東京都立小児総合医療センター )
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私の研究人生は、多くの出会いに育まれてきた。小児循環器医として診療を始めた頃、複雑な先天性心疾患をもつ一人の乳児を担当した。その出会いは、発生学と遺伝学の研究を通して先天性心疾患の本質を理解したいという思いの原点となった。1993年、故高尾篤良教授のご講演「分子レベルから解明される心奇形の成因と病態形成」に感銘を受け、研究室の門戸を叩いた。そこで故松岡瑠美子教授と出会い、かつて担当した乳児を22q11.2欠失症候群と診断したことが、生涯の研究テーマの出発点となった。
1996年、米国のDeepak Srivastava教授の最初のポスドクとして、心臓発生研究の最前線に身を置いた。同じ小児循環器医として先天性心疾患の成因解明を志すSrivastava教授との出会いは、異国での研究・生活を支えてくれただけでなく、研究者としての視野を広げてくれた。「Great minds think alike」という言葉に象徴されるように、同じ志を持つ者が国境を越えて出会うことの力を実感した。2002年に帰国し、前田潤先生、内田敬子先生、古道一樹先生をはじめ、志を共有できる仲間とともに「臨床心臓発生学」の確立を目指して研究を進めてきた。
その中で、22q11.2欠失症候群の責任遺伝子TBX1が神経堤細胞ではなく二次心臓領域に発現することを示し、その分子制御機構を明らかにすることで、先天性心疾患の発症機序に新たな概念を提唱した。また、新規疾患遺伝子GATA6を同定し、GATA6とTBX1が関わる心臓前駆細胞の増殖・移動・分化・相互作用の分子制御を解明した。さらに、日本人総動脈幹症患者において、従来報告のない常染色体潜性遺伝のTMEM260 c.1617delG(Keio-Tohoku variant)を病因として高頻度に同定し、先天性心疾患の遺伝診療に新たな視点をもたらしている。
振り返れば、患者さんから問いをいただき、高尾教授が進むべき道を示してくださり、世界を広げてくれたSrivastava教授や、慶應心臓班、小循など多くの同志との出会いが、私の心臓発生研究を育んでくれた。その一つひとつの出会いに感謝し、慶應心臓班を小柳喬幸先生に託したこれからも、Physician-ScientistとしてAcademic for Socialの歩みを続けていきたい。