講演情報

[III-TPD1-1]先天性心疾患患者の妊娠・出産

石戸 美妃子 (東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

先天性心疾患、妊娠・出産、ガイドラインフォーカスアップデート

生後間もない女児の親御さんから、将来子どもが産めますか?という質問を受ける事がある。思春期以降の先天性心疾患(CHD)を有する女性の診療において、妊娠出産は避けては通れないトピックスである。実際、心疾患合併妊娠の内、6割以上をCHDが占めており、心血管イベントの発生頻度は約15%と言われている。しかし、一言でCHDと言っても、心房中隔欠損症とFontan術後では、リスクが全く異る。大切なのは、診断名だけでなく、個々の病態によって妊娠が許容される状態かどうか、母体にとって妊娠による血行動態の増悪因子があるのか、生まれてくる子供のリスクはあるのか?を前もって検討した上でプレコンセプションカウンセリングを行うことである。内服薬がある場合には、患者が妊娠を希望した際に継続できる薬か、催奇形性や流早産のリスクにならないか、治療による有益性と変更・中止した場合のリスクのバランスを考えて薬の継続可否を決める必要がある。妊娠は、血液量の増加により前負荷がかかり、血圧(後負荷)は妊娠中変動する。そして、出産は自然分娩、誘発分娩、帝王切開どの形態でも母体に多大な負荷がかかる。中等度以上のCHDの母から生まれる児は、在胎週数が短く、出生体重が低い事が多く、児がCHDを有する可能性も通常より高い。児の周産期合併症率はフォンタン術後では約半数に上る。また、高度の左室流出路狭窄、中等度以上の肺高血圧では、母体の死亡率が高いため、妊娠出産を避けることが強く推奨されている。重要なのは、これらの妊娠が推奨されない疾患・病態を医療者が認知した上で、妊娠リスク評価を行い、mWHO分類II~III以上の症例は専門施設での適切なプレコンセプションケアにつなげる事である。2026年3月に日本循環器学会から心血管疾患患者の妊娠・出産の適応、診療ガイドラインのフォーカスアップデートが出版されたので是非参考にして頂きたい。