セッション詳細

[SY11]シンポジウム11_トラウマ/逆境体験の視点から精神療法を再考する

2025年6月19日(木) 13:30 〜 15:30
D会場(神戸国際会議場 4階 401会議室)
司会:舘野 歩(東京慈恵会医科大学精神医学講座)、南澤 淳美(京都府立医科大学精神医学教室/精神療法個人開業)
メインコーディネーター:南澤 淳美(京都府立医科大学精神医学教室/精神療法個人開業)
サブコーディネーター:菊地 俊暁(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)
精神療法研修委員会
トラウマは古くて新しいテーマである。19世紀のヒステリー概念に始まり、第一次世界大戦の帰還兵や大規模自然災害の被災者に関する研究を通じてトラウマの理解は深まってきた。そして1980年代に心的外傷後ストレス症(PTSD)の診断基準の確立につながった。近年では虐待など幼少期の逆境体験に対する関心も高まり、複雑性PTSDの概念が広く知られるようになった。
実際の臨床場面においては、患者自身が直接語ることはなくとも、潜在的なトラウマの存在を疑うことは少なくないだろう。表出する症状はそれぞれ異なり、操作的な診断としてはうつ病や不安症などに分類されるものの、特に難治例において、隠されたトラウマや逆境体験が明らかになることもある。発達障害や複雑な家族の問題が次第に現れてくる様を目の当たりにした経験も珍しくないだろう。
患者が自分の過去の傷つきを医師に話すまでには時間が必要なことも多く、現在の症状と過去のトラウマを結びつけていないケースもある。精神科医は、良好な治療関係の構築に加え、患者が意識していないトラウマへの感度を上げ、患者側の準備ができた際にトラウマを治療的に扱える力量が求められる。世界保健機構(WHO)や英国の国立保健医療研究所(NICE)ガイドラインで精神療法が治療の第一選択として推奨されていることからも、このテーマにおける精神療法的な関わりの重要性は大きい。
今回、精神療法研修委員会では、精神科一般診療における精神療法的な関わりについて、トラウマ/逆境体験の視点から検討する目的で本シンポジウムを提案した。成人期に問題が顕在化した発達障害の扱いや、トラウマ臨床における家族との関わり、さらには精神分析や認知行動療法などにおける見立てと関わり方、という観点から各演者が発表し、森田療法の専門家である指定討論者と共に議論を深めたい。さらにフロアとの対話を通じてトラウマ臨床における患者との関わり方について議論していきたい。

[SY11-1]心的外傷/小児期逆境体験の精神療法的拝領と処理

新宮 一成 (京都産業大学/奈良大学)

[SY11-2]響きあうトラウマがもたらす日常臨床における病像

岡村 斉恵1,2 (1.医療法人社団柏水会初石病院, 2.精神療法個人開業)

[SY11-3]トラウマ/逆境体験を有する人にどのように認知行動療法を実践するのか

菊地 俊暁 (慶應義塾大学医学部)

[SY11-4]複雑性PTSDを持つ患者の家族の理解と対応

渡辺 俊之 (渡辺医院/高崎西口精神療法研修室)

[指定発言]指定発言

新村 秀人 (大正大学臨床心理学部)