セッション詳細
[SY28]シンポジウム28_続・精神科領域における身体合併症を再考する
2025年6月19日(木) 15:45 〜 17:45
H会場(神戸国際会議場 5階 502会議室)
司会:渡邊 衡一郎(杏林大学医学部精神神経科学教室)、寺尾 岳(大分大学医学部精神神経医学講座)
メインコーディネーター:坪井 貴嗣(杏林大学医学部精神神経科学教室)
メインコーディネーター:坪井 貴嗣(杏林大学医学部精神神経科学教室)
前回大会では「精神科領域における身体合併症を再考する」と題して、主に統合失調症患者にしばしばみられる、あるいは生命予後に関わる身体合併症とその対策について議論し、フロアの先生方からも活発なご意見をいただくことができた。しかし、精神科領域において統合失調症と両輪の疾患とされる気分症(うつ病・双極性障害)については時間の関係上、ほとんど触れることが出来なかった。そこで本大会では、同様のテーマで気分症について取り上げたい。なぜなら、気分症は双極症患者はもちろん、うつ病患者も向精神薬を長期に服用する可能性が高く、その身体合併症が患者の予後やQOLに重大な影響を及ぼすことが知られているが、これらに対して十分に管理・対処されていないケースが散見されるからである。抗うつ薬や抗精神病薬に関連するQT延長症候群、肥満や耐糖能異常などは、気分症臨床において日常的に問題となる合併症であるが、早期の介入や定期的なモニタリングが不足しており、副作用が出現した後に対処しているのが現状である。心電図検査や一般項目の血液検査はジェネラルな対応が求められる昨今の医療事情において精神科医も必須でオーダーし初期対応すべきであるが、専門診療科とのシームレスな連携についても考えたい。また、気分症における薬剤性錐体外路症状(EPS)は、ガイドラインにおいて抗精神病薬使用の推奨が高まっているのに対し、そのEPSについてのエビデンスは統合失調症と比較すると乏しく、検討が求められる。さらに双極症や難治性うつ病において以前から使用されてきたリチウムは、その高い有効性の一方で忍容性についてリチウム中毒や腎機能障害、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症など多面的な注意が求められる。以上の観点から、気分症の薬物療法に対する正確な知識と対応策の共有が臨床現場では希求されており、本シンポジウムではそのエビデンスはもちろんであるがエキスパートの経験を合わせた要点をシンポジストからご講演いただく。総合討論では、大学病院や総合病院におけるリエゾンコンサルテーション、また精神科診療所や地域医療機関との連携を通じて、どのように身体的なケアを統合していくべきかを議論したい。また向精神薬による身体的合併症への治療だけでなく、そもそも予防していくための方策、そして気分症患者の望むリカバリーと薬物療法やその副作用との関わりなど多角的に議論を深めることで、明日からの日常診療に役立つ知見を提供することを目指したい。
[SY28-1]リチウムの可能性を最大限に生かすための工夫
○寺尾 岳 (大分大学医学部精神神経医学講座)
[SY28-2]気分症における肥満・耐糖能異常について
○菅原 典夫 (獨協医科大学精神神経医学講座)
[SY28-3]向精神薬による心電図QT延長の管理
○鈴木 雄太郎 (医療法人敬愛会末広橋病院)
[SY28-4]気分症における錐体外路症状を考察する
○坪井 貴嗣 (杏林大学医学部精神神経科学教室)