セッション詳細

[SY30]シンポジウム30_地域精神医療の未来を語る

2025年6月19日(木) 10:45 〜 12:45
K会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽1)
司会:佐久間 啓(社会医療法人あさかホスピタル)、林 輝男(社会医療法人清和会西川病院)
メインコーディネーター:藤井 千代(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
サブコーディネーター:林 輝男(社会医療法人清和会西川病院)
地域ケアにおける自立支援のあり方検討委員会
近年のわが国では、様々な分野の課題が絡み合って複雑化したり、個人や世帯で複数分野の課題を抱え、複合的な支援が必要とされる状況が多く見られるようになっている。少子高齢化の影響により、多くの地域社会で社会経済の担い手が減少し、耕作放棄地、空き家、商店街の空き店舗などの課題も表面化しており、地域社会の存続自体が危機に瀕している。また、近年のICT(Information and Communication Technology)やAI(Artificial Intelligence)発展によるコミュニケーションのあり方や生活そのものが大きく変化している。このような社会では医療のあり方も変化が求められており、地域社会全体を支えていくしくみのひとつとして、社会保障や産業、教育などとの領域を超えたつながりが求められる。ICTやAIが個人や社会に与える影響を理解するとともに、診療や支援において、これらを適切に活用していくことも必要となる。 これまで精神医療は、統合失調症や躁うつ病に代表されるようないわゆる精神病症状を呈する疾病を主な対象としてきた。しかし、ストレス社会の中で誰もが心の変調をきたし得ること、そしてその改善のために医療を利用することができるという意識が徐々に市民の間に浸透するにつれ、精神医療の対象となりうる状態の範囲も拡大してきた。精神医療は、従前より疾病の治療のみならず社会課題にも対応してきたが、近年の社会的課題の複雑化・多様化を受けて、その役割はさらに大きくなっている。入院治療から地域支援中心の精神医療へという流れの中で、地域には精神科を標榜するクリニックが増え、アウトリーチ支援の重要性も増している。また、保険医療機関でのオンライン診療が可能になるなど、精神医療の診療提供体制も多様化している。精神科医をはじめとする精神医療従事者は、このような社会情勢や精神医療への期待の変化に適切に対応することを求められているといえる。地域ケアにおける自立支援のあり方検討委員会では、上記のような現状を踏まえて、地本人の「自立」を支える地域精神医療のあり方を検討してきた。ここでいう「自立」とは、単に「他の援助を受けずに自分の力で生活すること」を指すのではなく、「自己決定に基づく主体的な生活を営むこと」であり、「パーソナル・リカバリー」と言い換えることもできる。本シンポジウムでは、個々の意思や価値観、主体性を尊重した医療をいかにして提供するか、医療機関と自治体等の地域との協働の視点を踏まえ、精神科診療所、精神科病院、総合病院精神科、精神保健福祉センターよりそれぞれの立場で議論する。 これからの時代、精神医療、特に地域の支援ニーズに対応できる地域精神医療への期待はますます大きくなってくるものと予想される。本シンポジウムでの議論を通じて、さまざまな立場で地域精神医療に従事する医療者が、「自立支援」「リカバリー支援」といった共通の支援理念をもって地域に貢献できる未来像を共有したい。

[SY30-1]市町村と精神科診療所の連携の可能性

上ノ山 一寛 (医療法人遙山会南彦根クリニック)

[SY30-2]少子高齢化社会における地域の中の精神科病院の役割

澤 滋 (社会医療法人北斗会さわ病院)

[SY30-3]自殺未遂者のリカバリー支援における無床総合病院精神科の地域連携

平 俊浩, 小田 幸治 (福山市民病院精神科・精神腫瘍科)

[SY30-4]自治体の精神保健支援から見た地域精神医療の未来

野口 正行 (岡山県精神保健福祉センター)

[指定発言]指定発言

藤井 千代 (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)