セッション詳細

[SY38]シンポジウム38_「不安性の苦痛を伴う」うつ病を深掘りする

2025年6月19日(木) 18:00 〜 20:00
L会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽2)
司会:古茶 大樹(聖マリアンナ医科大学神経精神科)
メインコーディネーター:井上 猛(東京医科大学/札幌花園病院)
サブコーディネーター:玉田 有(東京医科大学精神医学分野)
強い不安を併存するうつ病の患者は、重症度が高く、抗うつ薬への反応が悪く、また自殺リスクも高いことが知られている。うつ病の評価において不安のレベルに着目することは重要であり、「不安うつ病」を識別することの意義は以前から強調されてきた。不安うつ病の定義は統一されていなかったが、DSM-5で「不安性の苦痛(anxious distress)を伴う」という特定用語が導入され、現在ではこれが主要な診断基準となっている。不安性の苦痛を伴ううつ病(ANXD)においても、抑うつの重症度が高く、抗うつ薬への反応が悪く、慢性化しやすく、自殺念慮の割合が高いという臨床的特徴が確認されている。
ANXDの定義では、重症例は運動性の焦燥を伴うとされている。しかし一方で、気分障害における運動性の焦燥は、躁エピソードやメランコリアの特徴を伴ううつ病の症候でもある。近年ANXDは、混合性うつ病(Koukopoulos)や双極性障害、あるいはメランコリアの特徴を伴ううつ病との関連が指摘されている。
ANXDはうつ病の亜型であるにも関わらず、抗うつ薬の副作用が高頻度に認められ、反応も不良である。混合性うつ病や双極性障害と関連した病態であるならば治療戦略の見直しが必要であり、臨床的にも注意を要するカテゴリーであるといえる。本シンポジウムでは、ANXDと混合性うつ病、双極性障害、メランコリアとの異同を検討し、さらにANXDの概念を手がかりに、気分障害における不安、焦燥、混合状態、双極性について改めて考え直すことで、うつ病臨床の精緻化を目指す。
大前は、気分障害における不安と焦燥、混合状態や双極性などの諸概念について歴史的経緯を踏まえた考察を行う。大坪はDSM-5から導入されたANXDに関する総論的事項を述べる。武島はANXDと双極性障害、混合性うつ病との関連について論じる。玉田は、ANXDとメランコリアの関係を精神運動障害の側面から検討する。菅原は、ANXDの治療的側面について論じる。最後に、会場の参加者を交えたディスカッションを行う予定である。

[SY38-1]抑うつにおける不安・興奮(焦燥・激越うつ病)と双極性

大前 晋 (国家公務員共済組合連合会虎の門病院精神科)

[SY38-2]「不安性の苦痛を伴う」うつ病(DSM-5)の概説

大坪 天平 (東京女子医科大学附属足立医療センター)

[SY38-3]不安性苦痛と抑うつ性混合状態との関連-コインの表と裏か?

武島 稔 (明心会柴田病院精神科)

[SY38-4]不安性苦痛を伴ううつ病とメランコリア ―2つの「不安」をめぐって―

玉田 有 (東京医科大学精神医学分野)

[SY38-5]不安性の苦痛を伴ううつ病に対する薬物療法

菅原 裕子 (福岡大学医学部精神医学教室)