セッション詳細
[SY41]シンポジウム41_認知行動療法のこれから~リカバリーを目指す認知療法(recovery-oriented cognitive therapy: CT-R)~
2025年6月19日(木) 13:30 〜 15:30
M会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽3)
司会:久我 弘典(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)、松本 和紀(こころのクリニックOASIS)
メインコーディネーター:久我 弘典(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
メインコーディネーター:久我 弘典(国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター)
A.T.Beck博士が亡くなる二日前まで情熱を燃やして取り組んだ、重篤な精神疾患患者が夢や希望といったアスピレーション(aspirations)をきっかけに再起するリカバリーを目指す認知療法(Recovery-Oriented Cognitive Therapy: CT-R)が、本邦においても広がりを見せようとしている。従来の問題解決型アプローチの認知行動療法から個々のポジテイブな側面に目を向け活性化していくというアプローチへと発展させていったところは革命的であり、今後の我が国における精神医療方策へ一石を投じることを期待したい。
従来、意欲の困難は生物学的観点から理解されてきたが、Grantらは、敗北主義的信念(成功確率を過小に見積つもる"思考")が意欲へのアクセスの困難と関連しているとした(Grant & Beck、2009)。治療へのモチベーションとコミュニティ参加を予測する上でこのような信念が重要であることを踏まえ(Thomas et al.2017)、敗北主義的信念を不活性化し、エンパワメントと回復を促進する、より適応的な信念を活性化する方法としてCT-Rは開発された。グラントらが米国で行った無作為化臨床試験において、CT-Rは、コミュニティへの参加、動機づけ、陽性症状を通常治療よりも大きく改善した。CT-Rによる改善は、治療終了の6か月後にも維持されており、個人の罹病期間に関係なく有効性が得られたことは、最も重要な知見の一つである。既に、米国では、外来、コミュニティーチーム、急性期病棟、長期入院病棟、居住型支援サービス、矯正施設、早期介入など様々な領域で成果を挙げている。
本邦では、2022年に国立精神・神経医療研究センターで我が国初のCT-R研修が実施され、第22回日本認知療法・認知行動療法学会において開発者の一人、Paul Grant氏によりワークショップが実施され、書籍も翻訳出版された。その後、いくつかの施設で新たな実践が試みられ始めている。本シンポジウムでは、CT-Rの包括的な紹介を行うとともに、本邦における精神科病院、精神科診療所、デイケア、訪問看護、医療観察法病棟等の現場で実際にCT-Rの導入や実践を試みた経験を共有し、CT-Rについて理解を深め、この治療アプローチの本邦への普及の可能性や課題について実践的な議論を行う。
従来、意欲の困難は生物学的観点から理解されてきたが、Grantらは、敗北主義的信念(成功確率を過小に見積つもる"思考")が意欲へのアクセスの困難と関連しているとした(Grant & Beck、2009)。治療へのモチベーションとコミュニティ参加を予測する上でこのような信念が重要であることを踏まえ(Thomas et al.2017)、敗北主義的信念を不活性化し、エンパワメントと回復を促進する、より適応的な信念を活性化する方法としてCT-Rは開発された。グラントらが米国で行った無作為化臨床試験において、CT-Rは、コミュニティへの参加、動機づけ、陽性症状を通常治療よりも大きく改善した。CT-Rによる改善は、治療終了の6か月後にも維持されており、個人の罹病期間に関係なく有効性が得られたことは、最も重要な知見の一つである。既に、米国では、外来、コミュニティーチーム、急性期病棟、長期入院病棟、居住型支援サービス、矯正施設、早期介入など様々な領域で成果を挙げている。
本邦では、2022年に国立精神・神経医療研究センターで我が国初のCT-R研修が実施され、第22回日本認知療法・認知行動療法学会において開発者の一人、Paul Grant氏によりワークショップが実施され、書籍も翻訳出版された。その後、いくつかの施設で新たな実践が試みられ始めている。本シンポジウムでは、CT-Rの包括的な紹介を行うとともに、本邦における精神科病院、精神科診療所、デイケア、訪問看護、医療観察法病棟等の現場で実際にCT-Rの導入や実践を試みた経験を共有し、CT-Rについて理解を深め、この治療アプローチの本邦への普及の可能性や課題について実践的な議論を行う。
[SY41-1]リカバリーを目指す認知療法の集団療法としての可能性と普及に向けた取り組み
○三田村 康衣1,2 (1.国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター, 2.東京慈恵会医科大学大学院医学研究科医学系専攻博士課程連携大学院脳病態制御学)
[SY41-2]CT-Rを日常の外来診療に採り入れる~精神科診療所でのリカバリーを目指した心理的支援の実践
○松本 和紀 (こころのクリニックOASIS)
[SY41-3]リカバリーを目指す認知療法のセッティングを変えた適用について
○耕野 敏樹 (岡山大学学術研究院社会文化科学学域(文学部))
[SY41-4]精神科病院におけるCT-Rの実践
○徳山 明広 (一般財団法人信貴山病院ハートランドしぎさん)
[指定発言]指定発言
○大野 裕 (大野研究所)