セッション詳細
[SY43]シンポジウム43_幻覚・妄想が行動に及ぼす影響-精神症状評価の未開の地を拓く
2025年6月19日(木) 18:00 〜 20:00
M会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽3)
司会:赤崎 安昭(鹿児島大学医学部保健学科)、柏木 宏子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
メインコーディネーター:柏木 宏子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
サブコーディネーター:赤崎 安昭(鹿児島大学医学部保健学科)、村松 太郎(六番町メンタルクリニック/慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)
メインコーディネーター:柏木 宏子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
サブコーディネーター:赤崎 安昭(鹿児島大学医学部保健学科)、村松 太郎(六番町メンタルクリニック/慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)
幻覚・妄想は、それらを有していること自体が深い病理性の証左であり、その成因や定義について、精神医学においては古来多くの論争がなされ発展してきた。しかし臨床的により重要なのは、それらの症状によって当事者の行動が左右されるか否かという点である。たとえばPANSSにおいては、幻覚も妄想も、不適切な行動を引き起こした場合が「最重症」と定められている。他方、症状の行動への現れが、重症度という軸で評価できるかということを考えたとき、そこには深い問いが潜んでいることに気づかざるを得ない。幻聴や妄想が行動に影響する場合と影響しない場合があるが、それはなぜなのか。たとえば、元々の人格の影響はどうなのか。衝動性という観点からはどうなのか。意思決定の脳科学という観点からはどうなのか。これらは特に刑事精神鑑定で争点となることが多く、問題が顕在化しやすい。司法精神医学においては、症状の行動への影響は刑事責任能力判定の主要なテーマであることから、法廷において、精神鑑定を通して精神科医と法曹が議論を重ねてきた結果が判例として蓄積されている。精神病理学においては、Sense of Agencyについての脳科学の知見も取り入れることによって、自我障害という視点から、特に命令幻聴について、行動への影響の研究が進んでいる。そこから、なぜ、当事者は命令幻聴に従ってしまうのかを検討する。生物学的精神医学の視点からは、Salience(周囲の刺激に対してハッと注意が向く、重要と感じる機序のこと)と結論への飛躍バイアスの神経基盤に関する最新の研究や知見に基づき、妄想の脳神経基盤の形成、確信性、訂正困難性の観点から整理された「妄想の3要因モデル」が提唱されている。そして意思決定の問題は精神医学の領域にとどまるものではなく、認知心理学の分野にも洗練された多くの研究が存在する。本シンポジウムでは、それぞれの領域の視点から、幻覚・妄想の行動に及ぼす影響について考察することで、臨床や精神鑑定、研究の領域に新たな視点を提供し、理解を深めるとともに、異なる領域の知見を総合することで幻覚・妄想についての研究をさらに上のステージに進めることを目指す。
[SY43-1]幻覚妄想の行動への影響: 裁判所スタイル
○村松 太郎 (JDC六番町メンタルクリニック)
[SY43-2]統合失調症患者はなぜ幻聴の言葉に従ってしまうのか?:“他律”の概念を用いた自我障害の観点からの考察
○大井 博貴 (慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)
[SY43-3]妄想の神経科学的・計算論的3要因モデル
○宮田 淳 (愛知医科大学医学部精神科学講座)
[SY43-4]幻覚・妄想と意思決定論
○竹村 和久 (早稲田大学)
[指定発言]指定発言
○今井 淳司 (地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立松沢病院)