セッション詳細

[SY48]シンポジウム48_アルツハイマー病の臨床に役立つ神経心理と神経病理-抗Aβ抗体療法を踏まえて-

2025年6月19日(木) 10:45 〜 12:45
P会場(神戸国際展示場 1号館 2階 展示室A)
司会:川勝 忍(福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座)、橋本 衛(近畿大学医学部精神神経科学教室)
メインコーディネーター:川勝 忍(福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座)
サブコーディネーター:橋本 衛(近畿大学医学部精神神経科学教室)、小林 良太(山形大学医学部精神医学講座)
抗Aβ抗体療法の登場は、認知症の薬物療法にパラダイムシフトを引き起こした。従来は、その患者が認知症か否か、そしてその原因が何かということが求められていた。しかし、抗Aβ抗体療法の適応は、軽度認知障害から軽度認知症までであるので、今まで治療対象でなかった軽度認知障害も治療対象に含まれるようになった。従って、その患者が軽度認知障害か否か、そしてその原因が何か、さらに、認知症の場合は、軽度なのかどうかということが求められるようになった。
抗Aβ抗体療法の導入には、アミロイドPETか脳脊髄液中のAβの測定が必要であるが、バイオマーカー検査だけをもって診断が完結するわけではない。認知症の診断で最も重要なのは、認知症者の症状を知る家族や介護者の情報であるが、家族や介護者のほとんどは専門家でないため、生じている障害を言葉で説明するのが難しい。主訴が物忘れであっても、実は、言葉が出にくいのも、迷子になって家に帰れなくなるのも、道具が使えなくなるのも、本人や介護者にとっては、物忘れであり、健忘以外の症状で困っている可能性がある。臨床医は、本人や介護者の訴える困りごとを詳しく聴取し、患者にどのような認知機能障害が生じ、生活に支障があるのか、より詳細な評価が求められる。そこで役立つのが、神経心理学と神経病理学の知識である。
神経心理学の知識は、認知機能障害の特徴や重症度などを評価し、診断のみならず、認知機能障害に対する適切なマネ―ジメントのためにも重要である。一方、神経病理学の知識は、脳病理の局在による症候の特徴や、病期の経過における臨床症状の変遷など、こちらも症状把握や、ケアマネージメントを考える上でも重要である。しかしながら、神経心理学と神経病理学のどちらもやや敷居が高く感じられているきらいがあり、苦手意識を持つ精神科医も少なくない。
昨年は、認知症の原因として多い、アルツハイマー病とレビー小体病の神経心理学と神経病理学の知識について概説したが、本年は、抗Aβ抗体療法が始まったアルツハイマー病に絞って、精神科実臨床における抗Aβ抗体療法の患者像も踏まえた、認知症診療に実践的な内容を概説することを目的とする。鐘本が、アルツハイマー病のサブタイプの多様性について、非定型例にも触れながら解説し、橋本が神経心理、川勝が神経病理を解説する。小林は、精神科臨床で実際、抗Aβ抗体療法を行った患者の神経心理やバイオマーカーから想像される神経病理像について発表する。本シンポジウムは抗Aβ抗体療法も含めた精神科における認知症診療において、日本精神神経学会の会員である精神科医にとても有意義なものであり、本学術集会のテーマである精神神経科学の充実・発展に資するものであると考える。

[SY48-1]アルツハイマー病の臨床像の多様性

鐘本 英輝 (大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センター)

[SY48-2]アルツハイマー病の神経心理学

橋本 衛 (近畿大学医学部精神神経科学教室)

[SY48-3]アルツハイマー病の神経病理学;抗Aβ抗体療法を踏まえて-

川勝 忍 (福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座)

[SY48-4]抗Aβ抗体療法の実臨床から神経心理学的所見を含む患者像と神経病理像を振り返る

小林 良太1,2, 森岡 大智1,2, 川勝 忍2,3, 木村 正之2, 篠田 淳男2, 鈴木 昭仁1 (1.山形大学医学部精神医学講座, 2.篠田総合病院, 3.福島県立医科大学会津医療センター附属病院)