セッション詳細

[SY70]シンポジウム70_性的逸脱行動に対する条件反射制御法

2025年6月20日(金) 13:30 〜 15:30
E会場(神戸国際会議場 4階 402会議室)
司会:長谷川 直実(医療法人社団ほっとステーション)
メインコーディネーター:長谷川 直実(医療法人社団ほっとステーション)
条件反射制御法(CRCT:Conditioned Reflex Contorol Technique)は、パブロフの信号学説、条件反射学説を土台に開発された治療技法である。ヒトは他の動物と同様に第一信号系を持ち、更にヒトのみがもつ第二信号系を持ち、従って、二つの中枢を持っている。第一信号系は、無意識的に、刺激を受ければ対応する反応により、自律神経、気分、動作の全てを直接的に司り、過去に生理的報酬を獲得した定型的な行動を再現する作用を生じる。一方、第二信号系は、意識的に、現状を評価し、将来を計画し、結果を予測し、実行を決断し、出力として、直接的に動作を司る。その思考と動作は自律神経と気分を司る反射を刺激して、対応する状態が生じながら、行動を牽引しようとする。しかし、第二信号系よりも第一信号系の特定の反射連鎖がはるかに強くなり、逸脱行動が反復する状態にまで強化されることがある。CRCTは、このような状態になった第一信号系を制御するための治療技法である。第一信号系を制御していくため、心理教育などその他の技法にも落ち着いて取り組みやすくなる利点がある。
CRCTは開発されてまだ20年に満たない比較的新しい治療技法であり、当初はアルコールや薬物の繰り返される乱用に対して実施された。現在では、病的賭博、盗癖、強迫性障害、パラフィリア、ストーカー行為、インターネット・ゲーム障害など、様々な「やめようと思うけどやめられない行動」に対して実践されている。
下総精神医療センターと医療法人社団ほっとステーションでの共同研究では、性犯罪で逮捕歴がある人のCRCT開始後2年間の再逮捕率を調査し、検証を行っている。
CRCTは、制御刺激設定ステージ、疑似作業ステージ、想像作業ステージ、維持ステージと治療ステージを進むが、本能的行動が強く関与している性的逸脱行動に対する方法は、物質使用障害に対する方法と特に想像作業等において大きく異なる部分がある。また、入院病棟と地域・外来で実践する方法も同じではない。環境からの刺激を受ける地域・外来では、再問題行動のリスクがあるため、それを防止するために、家族や支援者の見守り、薬物療法、外出時の観察表、ケア会議、多職種での関わりなどの工夫を要する。
一部の矯正施設において、性犯罪で服役している人の再犯防止のために一般改善指導としてCRCTが実施されている。また、学校内などで性的逸脱行動を繰り返す、知的・発達障害の生徒たちに関する受診依頼が高等養護学校からくることも多く、初犯防止にもなっていると考える。

[SY70-1]性的逸脱行動に対する条件反射制御法の理論

平井 愼二 (独立行政法人国立病院機構下総精神医療センター)

[SY70-2]盗撮の傾向とCRCT

長谷川 直実, 山本 泰雄, 松野 翔平, 田原 和代, 畑中 弘 (医療法人社団ほっとステーション)

[SY70-3]性的逸脱行動に対する条件反射制御法の効果検証について

山本 泰雄1, 長谷川 直実1, 花田 大地1, 松野 翔平1, 堀田 茂1, 野村 英樹2, 飛田 恭子3, 平井 愼二3 (1.医療法人社団ほっとステーション大通公園メンタルクリニック, 2.金沢大学付属病院総合診療部, 3.独立行政法人国立病院機構下総精神医療センター)

[SY70-4]痴漢に対する条件反射制御法の実際

中元 総一郎 (一般財団法人成研会結のぞみ病院)