セッション詳細
[SY90]シンポジウム90_今、薬物使用する若者を如何に守るか? ― 社会教育と啓発への視点 ―
2025年6月20日(金) 15:45 〜 17:45
M会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 偕楽3)
司会:野田 哲朗(大阪人間科学大学/東布施野田クリニック)、岩井 圭司(大阪人間科学大学/阪本美佐子メンタルクリニック)
メインコーディネーター:岩井 圭司(大阪人間科学大学/阪本美佐子メンタルクリニック)
サブコーディネーター:野田 哲朗(大阪人間科学大学/東布施野田クリニック)
メインコーディネーター:岩井 圭司(大阪人間科学大学/阪本美佐子メンタルクリニック)
サブコーディネーター:野田 哲朗(大阪人間科学大学/東布施野田クリニック)
2023年12月に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」が成立し、2024年12月12日からその一部が施行される。このことにより、大麻のカンナビノイド成分の一種である精神刺激作用のあるTHC(テトラ・ヒドロ・カンナビノール)が麻薬に分類され、大麻が麻薬指定となった。大麻は、ヘロイン、LSD、MDMA等と同等の扱いとなり、大麻取締法では犯罪とされていなかった「使用」が「犯罪」となり、使用者は刑罰を科されることになった。
近年、大麻およびLSD、MDMAなどの違法薬物使用が若者を中心に広がり、特に大麻使用が、重大犯罪のような実名報道がされるようになった。2023年に薬物事件の検挙者数をみると、大麻が統計のある1958年以降で最多の6482人(前年比21・3%増)に上り、初めて覚醒剤(5914人、前年比3・4%減)を上回り、しかも10代と20代が全体の70%を占めている。使用が犯罪化されることによって一層の検挙者の増加が予想される。
現在、大麻所持で逮捕され検察官、裁判官の印象をよくし刑の減軽をもとめて医療機関を訪れる若者が少なくない。しかし、うつ病、PTSD、発達障害などの精神疾患を有する若者、及び虐待、いじめ被害などのトラウマサバイバーの若者が大麻の抗うつ・不安作用を求めて依存になることはあっても、嗜好目的の大麻使用で依存にまで至るものは極めて少ない印象がある。医療大麻はもとより嗜好大麻を合法とする世界潮流を察知している若者に対して、大麻使用が違法であることの規範意識を醸成することが難しい現状がある。また、大麻に限らず、違法薬物使用の若者には何らかの精神疾患、トラウマを認め、刑罰より精神医療支援が妥当だと考えられるケースが多々ある。
一方、若い女性を中心に風邪薬など市販薬のover dose(OD)が問題になっているが、彼らの多くも、精神疾患を抱えていたり、トラウマサバイバーであったりする。成分には、麻薬及び向精神薬取締法によって規制されるオピオイドのジヒドロコデイン酸塩、覚醒剤取締法によって規制されている覚醒剤原料のdl-メチルエフェドリン塩酸塩が低濃度だが含有されており、ODによって精神症状の軽減を図るのである。合法、違法に限らず薬物使用の背景には、精神医療にアクセスすることへの心理抵抗、偏見があることが窺われ、若者の薬物乱用は精神医療の課題である。
少子化が進む中、次代を担う若者が薬物事犯で検挙されることは、社会にとって大きな損失である。では、大麻をはじめとする薬物使用から若者を守るには、どのような社会教育や啓発が有効なのか。司法、医療、心理、報道、当事者・支援者、教育の多角的な視点から総合的に検討する。
シンポジスト
園田寿(甲南大学)「大麻取締法改正の背景と問題点」、谷家 優子(東布施野田クリニック)「薬物を使用する人々へのスティグマ」
吉田緑(中央大学大学院)「薬物報道は若者を守れるのか」、倉田めば(大阪ダルク)「ダルクからみた大麻相談者の内実」
岩井圭司(大阪人間科学大学)「学校教育の現状と問題点」
近年、大麻およびLSD、MDMAなどの違法薬物使用が若者を中心に広がり、特に大麻使用が、重大犯罪のような実名報道がされるようになった。2023年に薬物事件の検挙者数をみると、大麻が統計のある1958年以降で最多の6482人(前年比21・3%増)に上り、初めて覚醒剤(5914人、前年比3・4%減)を上回り、しかも10代と20代が全体の70%を占めている。使用が犯罪化されることによって一層の検挙者の増加が予想される。
現在、大麻所持で逮捕され検察官、裁判官の印象をよくし刑の減軽をもとめて医療機関を訪れる若者が少なくない。しかし、うつ病、PTSD、発達障害などの精神疾患を有する若者、及び虐待、いじめ被害などのトラウマサバイバーの若者が大麻の抗うつ・不安作用を求めて依存になることはあっても、嗜好目的の大麻使用で依存にまで至るものは極めて少ない印象がある。医療大麻はもとより嗜好大麻を合法とする世界潮流を察知している若者に対して、大麻使用が違法であることの規範意識を醸成することが難しい現状がある。また、大麻に限らず、違法薬物使用の若者には何らかの精神疾患、トラウマを認め、刑罰より精神医療支援が妥当だと考えられるケースが多々ある。
一方、若い女性を中心に風邪薬など市販薬のover dose(OD)が問題になっているが、彼らの多くも、精神疾患を抱えていたり、トラウマサバイバーであったりする。成分には、麻薬及び向精神薬取締法によって規制されるオピオイドのジヒドロコデイン酸塩、覚醒剤取締法によって規制されている覚醒剤原料のdl-メチルエフェドリン塩酸塩が低濃度だが含有されており、ODによって精神症状の軽減を図るのである。合法、違法に限らず薬物使用の背景には、精神医療にアクセスすることへの心理抵抗、偏見があることが窺われ、若者の薬物乱用は精神医療の課題である。
少子化が進む中、次代を担う若者が薬物事犯で検挙されることは、社会にとって大きな損失である。では、大麻をはじめとする薬物使用から若者を守るには、どのような社会教育や啓発が有効なのか。司法、医療、心理、報道、当事者・支援者、教育の多角的な視点から総合的に検討する。
シンポジスト
園田寿(甲南大学)「大麻取締法改正の背景と問題点」、谷家 優子(東布施野田クリニック)「薬物を使用する人々へのスティグマ」
吉田緑(中央大学大学院)「薬物報道は若者を守れるのか」、倉田めば(大阪ダルク)「ダルクからみた大麻相談者の内実」
岩井圭司(大阪人間科学大学)「学校教育の現状と問題点」
[SY90-1]偏見とスティグマの歴史から教訓を学び、それを政策に生かす薬物教育を
○園田 寿 (甲南大学名誉教授)
[SY90-2]学校における薬物乱用防止教育の現状と課題
○谷家 優子1,2,3 (1.大阪人間科学大学, 2.東布施野田クリニック, 3.大手前大学)
[SY90-3]薬物報道は若者を守れるのか―報道機関、そして大学は何ができるか―
○吉田 緑 (中央大学大学院法学研究科(刑事法専攻))
[SY90-4]ダルクからみた大麻相談者の内実
○倉田 めば (大阪ダルク)
[SY90-5]学校は対話の場になりうるか:青少年をケアするという視点
○岩井 圭司 (大阪人間科学大学)