セッション詳細

[SY92]シンポジウム92_本人が受診しない場合に精神科医は何ができるか:家族療法の考え方を活用したアプローチ

2025年6月20日(金) 13:30 〜 15:30
O会場(神戸ポートピアホテル 本館 B1階 生田)
司会:布施 泰子(茨城大学保健管理センター)、大森 美湖(東京学芸大学保健管理センター)
メインコーディネーター:布施 泰子(茨城大学保健管理センター)
サブコーディネーター:渡辺 俊之(渡辺医院/高崎西口精神療法研修室)
シンポジストはいずれも家族療法をバックグラウンドに持つ精神科医である。2023年と2024年の精神神経学会学術総会では、日常の診療に家族療法の考え方をどのように取り入れて家族同席面接を実践しているかについて発表した。今回は本人が来院しない場合に何ができるかについて発表する。
精神科では、病識がなかったり外出が困難だったりといった事情のために、患者本人が受診に至らない場合がしばしばある。家族が本人抜きで精神科にコンタクトをとった場合、精神科医は家族の話からおおよその見立ては可能であるし、治療が必要と判断される場合は、なんとか治療に結びついてほしいと願うであろう。しかし、気持ちとは裏腹に「本人が来てくれないとできることはありません」「本人を説得して連れてきてくれれば、いつでも対応します」と伝えるしかできないことがあると想像される。本シンポジウムでは、家族療法の考え方を取り入れることによって、このような時どのようにして治療的関与ができるかについて、児童・思春期・青年期、統合失調症、末期癌や認知症の場合を例に、シンポジストの実践経験を交えて伝える予定である。また、その更なる可能性や問題点について、フロアを交えて議論を展開したい。
家族療法では、家族をシステムとして、患者を家族システムの一員として捉える。患者の病理も治療のリソースも、患者個人ではなく家族システムの中にあると考える。また、家族のメンバーの間で、常に様々な相互作用が起こっている(円環的因果律)と考える。これらを根拠にアプローチすることによって、家族システムに変化が起こり、その一員である患者に対して治療的展開をもたらす糸口を作ることができる。これをシステムズアプローチと呼ぶ。こうした立場に立てば、患者本人が受診しなくても、精神科医にはできることがある。
例えば児童・思春期・青年期の精神科臨床では、親子・家族関係や、学校での問題を契機に子どもが心の問題を呈している場合も多く、親子関係や、家族間のコミュニケーションのあり方、学校とどう連携するかなどを家族と話し合うことで、患者本人は受診せずとも変化が生じ始めることが多い。またそれを機に本人が受診することも多い。統合失調症など重い精神障害の場合、治療中断や病識の乏しさ、病状の悪化のため家族しか来院できない場合もある。そういう際には困難な状態にある家族への支援として、疾病や障害の知識を共有し、危機介入や困難な事態への対処を見いだす家族心理教育が役に立つ場合が多い。家族心理教育は、摂食障害においても重要である。末期癌や進行性難病の患者では、その精神状態の変化に困惑した家族が相談に来ることがある。親や配偶者の認知症を疑った家族が相談に来ることもある。このような場合、家族はある意味疾患を家族システム内に置きつつ家族機能を維持する必要があり、そのためのアプローチが可能である。

[SY92-1]本人が受診しない場合に精神科医は何ができるか:児童・思春期精神科で家族療法を活用した場合

森野 百合子 (成増厚生病院)

[SY92-2]青年期において引きこもりや不登校になっているの場合の、家族を通してのアプローチ

布施 泰子 (茨城大学)

[SY92-3]多機能型精神科診療所における家族支援:アウトリーチと家族相談

後藤 雅博 (こころのクリニックウィズ)

[SY92-4]来院できない身体疾患患者や認知症患者の家族へのアプローチ

渡辺 俊之1,2 (1.渡辺医院, 2.高崎西口精神療法研修室)

[指定発言]指定発言

市橋 香代 (東京大学附属病院精神神経科)