セッション詳細

[SY97]シンポジウム97_新時代を迎えた認知症のケアに向けて -ジェンダー観点からの検討-

2025年6月20日(金) 15:45 〜 17:45
P会場(神戸国際展示場 1号館 2階 展示室A)
司会:奥山 純子(尚絅学院大学総合人間科学系)
メインコーディネーター:奥山 純子(尚絅学院大学総合人間科学系)
サブコーディネーター:穴水 幸子(独立行政法人国立病院機構栃木医療センター)
男女共同参画委員会
2023年6月14日、共生のための認知症基本法が成立し、2024年1月1日から施行されることが決定した。また、同年9月には総理主催の「幸齢社会」実現会議が開催され、高齢者介護の新たな局面を迎えている。
平均寿命の延伸や高齢者人口の増加に伴い、介護ニーズは顕著に増大している。しかし、一方で家族構成の多様化や社会構造の産業化が進む中、これまで家族や地域に依存していた私的介護機能は低下の一途を辿っている。特に、疾患修飾薬レケンビ(一般名レカネマブ)の薬事承認および保険適用は、認知症ケアの新時代を象徴する重要な出来事であり、科学の進展によって従来の枠組みを超えた新たな展望が開かれている。 
本シンポジウムでは、認知症介護の課題が当事者と介護者の関係において多様性を持つことに着目し、社会構造に潜む性差や不平等に関する問題を検討する。各シンポジストは以下のテーマに基づき発表を行う:
1. 新しい治療薬の導入による男女の差異:アルツハイマー型認知症の症状進行を直接抑制する効果が期待出来る新薬レケンビ(一般名レカネマブ)の導入が、患者およびその家族に与える異なる影響を検証し、性別に基づく役割の変化を考察する。
2. アルツハイマー病のバイオマーカーの開示と女性介護者への支援のあり方:アルツハイマー病の前駆状態に該当する可能性を予測する技術が進み、アルツハイマー病前駆期(プレクリニカル期)の診断が可能となってきている。このアルツハイマー病前駆期バイオマーカーの陽性状態が示されたものを介護支援する「pre-clinical care giver」について、特に女性の「pre-clinical care giver」に対する具体的な支援策を分析する。
3. 高額医療を必要とする新時代の認知症治療に伴う財産権の性差:認知症に対する新しい治療に関連する高額医療が家庭の経済状況に与える影響や、財産権に関する問題について議論し、特に女性が直面する権利に関する課題を浮き彫りにする。
4. 更年期世代におけるダブルケアラーへの支援方法:親の介護と自身の更年期障害を同時に抱えるダブルケアラーに対する支援方法を探求する。この世代の女性が直面する特有の課題に対処するための具体的な支援策を提案する。
本シンポジウムは、認知症ケアにおける最新の科学的知見と実践的アプローチを包括的に探求する貴重な機会である。特に、シンポジニストや参加者とのディスカッションは、認知症ケアにおける新たな視点を開く重要な場となる。参加者は、自らの臨床経験を照らし合わせながら、新たな知見を得ることができるであろう。ジェンダーの観点からの分析は、すべての精神科医にとって認知症ケアの深化に寄与する重要な要素である。今後の医療政策や実践に向けた具体的な提言を通じて、様々な立場の精神科医が関心を持ち、積極的に発言するシンポジウムを目指す。

[SY97-1]アルツハイマー型認知症に対する新しい治療薬の導入による男女の差異

穴水 幸子 (独立行政法人国立病院機構栃木医療センター)

[SY97-2]アルツハイマー病のバイオマーカーの開示と女性介護者への支援のあり方

和氣 大成1,2 (1.聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科, 2.慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室)

[SY97-3]高額医療に対する意思決定と資産との関連について

江口 洋子1, 佐野 潤子2 (1.慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室, 2.東京家政学院大学)

[SY97-4]ダブルケアを行う更年期女性への健康支援

寺田 由紀子 (帝京大学助産学専攻科)